研究課題/領域番号 |
24760060
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
岡山 友昭 一橋大学, 大学院経済学研究科, 特任講師 (80587866)
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キーワード | 数値解析 |
研究概要 |
本研究の目的は,特異性をもつ方程式に対し,これまでになく高い性能をもつ数値解法を開発し,さらに理論的に動作保証も行うことである.対象とする方程式は物理・化学などでしばしば現れるが,特異性をもつ関数が現れるために数値シミュレーションが難しく,既存の汎用手法ではうまく扱えない.ただし,その特異性は境界にのみ現れ,内部では性質のよい「解析関数」になることが多く,そのような場合にはSinc数値計算法が非常に有効である.実際に研究代表者によって,特異性をもつ関数に対し,Sinc数値計算法に基づく高性能近似公式がいくつか提案されている.そこで本研究では,この成果をもとに,特異性をもつ方程式に対する超高性能数値解法の開発を行うこと,さらに理論解析によってその動作保証も厳密に行うことを目的とする. 平成24年度では,Abel核と呼ばれる,積分核が「代数的」な特異性をもつ場合で研究を行ったが,平成25年度は積分核が「対数的」な特異性をもつ場合について研究を進めた.代数的な特異性の場合は,Sinc数値計算法による基本近似公式に対して明示的な誤差上界を与える解析結果が与えられているが,対数的な特異性の場合はまだ与えられていないために,まずその基本となる部分から解決する必要があった.Sinc数値計算法では「SE変換」と呼ばれる変数変換と組み合わせる方法と,「DE変換」と呼ばれる変数変換と組み合わせる方法の二種類があるが,これら二種類のいずれの場合についても理論解析を行った.代数的な特異性の場合とは異なり,解析に自由度がある部分があったが,実用的な観点から妥当と思われるものを選択して解析を進めた. また,平成26年度の研究(特異性をもつ微分方程式に対する研究)を見越して,微分が含まれた方程式に対する研究も進めた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成25年度に行う予定であった対数的な特異性をもつ積分核の場合の研究に加え,平成26年度に行う予定である 「特異性をもつ微分方程式に対する研究」を見越して,まずは特異性をもたない場合の微分が含まれる様々な方程式に対して研究を行うべきだと考え,実際に研究を進めた.具体的にはVolterra微積分方程式やFredholm微積分方程式である.これらに関しては既にSinc数値計算法に基づく数値解法が提案されているものもあるが,理論解析による動作保証は厳密に行われていない.また,SE変換と組み合わせたSinc数値計算法の場合のみ考えられており,DE変換と組み合わせた場合については考えられていない.そこで,DE変換と組み合わせた方法を提案した上で,SE変換とDE変換のいずれを用いた場合についても理論解析による動作保証を行った. さらに,本研究では基本的に有限区間の場合を取り扱っているが,さらなる研究発展を見据え,無限区間の場合についてSinc数値計算法の積分近似公式に対して明示的な誤差上界を与える解析も行った.これもSinc数値計算法の適用可能性を広げる重要な結果である.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度までは,基本的に特異性をもつ積分方程式をターゲットにしていたが,平成26年度からは特異性をもつ微分方程式を考えるため,積分と微分のギャップが問題となる.一つのアイディアは,新たに微分の場合について一から考え直すのではなく,平成25年度までに行った積分方程式の形に与方程式をうまく帰着することである.実際平成25年度に行った,特異性をもたない場合の微分が含まれる方程式に対する研究で,このアイディアがうまく成り立つことを確認しており,特異性をもつ場合にも同様の方針が応用できるのではと考えている.特に,扱う予定の一つの非整数階微分方程式の初期値問題の場合は,Abel核をもつ積分方程式に帰着できることが確認されており,この方針では順調に研究は進むものと考えている. もう一つのアイディアとして,積分方程式の形に持っていくのではなく,そのままの形で扱うことも当然ながら考えられる.この方針がうまく成り立つならば,上述の方法よりも良い結果が得られる可能性もあるため,並行して検討する予定である.
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