研究課題/領域番号 |
24760061
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
宮田 考史 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90581645)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 固有値問題の数値解法 / 数理工学 |
研究概要 |
本研究は,計算科学に現れる超大規模固有値問題に対して,高速な数値解法の研究と開発を行う.本年度は以下の研究に取り組んだ. (1) 有力な数値解法として注目されているJacobi-Davidson法に対して,本研究は独自の改良を行っている.本年度は,従来のJacobi-Davidson法やその改良版を含むような数値解法のフレームワークの開発に取り組んだ.本研究のフレームワークを用いて,Jacobi-Davidsonタイプの数値解法が機械的に導出可能であることを示した. (2) ナノスケール接合の電子構造計算は,特殊な係数行列の固有値問題に帰着される.このような特殊な固有値問題に対して,応用分野で長い使用実績のあるQR法が適用されているが,数値解の精度改善が望まれている.本研究では,行列の特徴を利用することで,数値解の精度改善に向けたアルゴリズムの改良を行った.また,上記の他にも,回路設計,ネットワーク解析に現れる固有値問題に対して,高速解法の研究と開発に取り組んだ.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,計算科学に現れる超大規模固有値問題に対して,高速な数値解法の研究と開発を行っており,本年度は下記の成果が得られた. (1) Jacobi-Davidson法やその改良版を含むような数値解法のフレームワークの整備に取り組んだ.本研究のフレームワークを用いて,Jacobi-Davidsonタイプの数値解法が機械的に導出可能であることを示したため,理論面における進展が顕著であった. (2) 電子構造計算に現れる特殊な係数行列の固有値問題に対して,問題の特徴を利用することで,高精度な数値解法の開発に取り組んだ.本研究の遂行は,当初の計画にない新しい研究成果であり,今後もアルゴリズムの改良に取り組む.
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今後の研究の推進方策 |
本研究は,計算科学に現れる超大規模固有値問題に対して,高速な数値解法の研究と開発を行っている.今後は以下の計画で研究を行い,理論と実用の両面から,本研究の進展に取り組む. (1) 本研究で開発した数値解法のフレームワークは,Jacobi-Davidsonタイプの数値解法を機械的に導出することが可能である.本研究のフレームワークを通して,Jacobi-Davidson法やその改良版を統一的な観点から再構築し,解法間の関係性を独自の観点で明らかにするとともに,より高速な新解法の導出に取り組む. (2) 電子構造計算に現れる特殊な固有値問題に対して,本研究で開発を進めているアルゴリズムは,問題の特徴を利用することで,誤差の発生しやすい計算を回避することが可能である.今後,大規模な実際問題に対する数値実験を通して,本研究のアルゴリズムの有効性を数値的に検証する.
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究では,有力な数値解法として注目されているJacobi-Davidson法に対して,独自の視点で改良を行っている.本年度は,数値解法のフレームワークの整備に取り組み,本研究のフレームワークを通して,Jacobi-Davidsonタイプの数値解法が機械的に導出可能であることを示した.このように,本年度の成果は,理論面での進展が顕著であったため,数値実験による数値解法の性能評価は次年度以降とした. 今後は,フレームワークの整備を継続するとともに,新解法の導出に取り組む.また,導出された解法に対して,数値実験による性能評価を行い,解法の有効性を数値的に検証する.その際,大規模数値実験を行う計算機環境が必要となるため,本研究の研究費を用いて,高速な計算機環境を整備する.
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