研究課題/領域番号 |
24760062
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
荻野 正雄 名古屋大学, 情報基盤センター, 准教授 (00380593)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 領域分割法 / 並列有限要素法 / ヘテロジニアスコンピューティング / ハイパフォーマンスコンピューティング / 超大規模計算 / CPU-GPUハイブリッド並列処理 |
研究実績の概要 |
本年度は,磁場構造連成解析に向けて,電磁界解析向けの領域分割型反復法の開発を行った.特に,収束性が悪いことで知られるFull-wave電磁界解析を効率化するために,複素対称行列を係数に持つ連立1次方程式向け反復法としてDDM-MINRES-like_CS法を開発した.これにより,約2千万自由度規模の高周波電磁波解析において従来から用いられるDDM-COCG法と比べて計算時間を7割削減することに成功した. また,BDD法の高速化に向けて,並列計算アルゴリズムの見直しを行った.数値実験を行った結果,coarse問題解析がボトルネックである,そのためには領域分割法の多階層化が避けられないことが明らかになった.そこで,多階層領域分割法の有効性を確認するために,計算ノード1台によってBDD法で解くことができる問題規模の限界を調査した.これにより,32GiBメモリを搭載した近年の計算ノード1台によって1千万自由度規模問題解析を約2分で完了できることが分かった. さらに,超大規模自由度解析に向けて,ハイブリッド並列メッシュ細分割ツールの開発を行った.これにより,1兆自由度規模メッシュの生成を行い,名古屋大学FX10を用いて90時間程度で成功した.しかし,その規模の入出力データをストレージに出力することが困難であることが分かった.そこで,1兆自由度規模シミュレーションデータの操作を効率化するために,多階層精度圧縮数値記録を用いたデータ圧縮技法を実装した.これにより,有限要素解析データにも有効であることが分かり,1兆自由度規模解析の準備が整った. また,ヘテロジニアス型コンピューティングとして,x86系CPUとGPUの混在環境を対象とし,領域分割型反復法について,疎行列格納方式の違いによる計算時間を評価指標とし,性能評価を継続して実施している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,エクサスケール級演算性能を持つスパコンによって解決されるべき課題で必要となる数兆から百兆自由度規模を実用時間内で実現する数値計算法の開発を行うものであり,最終目標として,数兆自由度規模モデルを用いた磁場構造連成解析の実現を目的としている.また,今後の大規模計算を支える計算機アーキテクチャの1つとして,異種演算装置の混在を想定し,ヘテロジニアスコンピューティングへの対応も行う. 超大規模解析として,本年度は1兆自由度解析の実現に向けてメッシュ生成のハイブリッド並列化を行い,実際に1兆自由度規模メッシュが生成可能であることを示した.また,超大規模解析ではファイル入出力が無視できなくなることから,有限要素解析向けのデータ圧縮技術も開始しているなど,おおむね順調にすすんでいる. ヘテロジニアスコンピューティングとして,Intel Xeon PhiなどのメニーコアCPU,NVIDIA TeslaなどのGPUが想定されるが,本年度はGPUを用いたオフロード型計算に成功するなど,おおむね順調にすすんでいる. 磁場構造連成解析システムの開発として,本年度は構造解析と比べて反復法の収束性が悪い磁場解析について,複素対称問題向けの新しい反復法を開発するなど,おおむね順調にすすんでいる.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は,ヘテロジニアス型スパコンを用いて,1兆自由度規模モデルの磁場構造連成解析を実施する.また,メモリの混在・階層構造向け領域分割型反復法の開発及び実装を行うことで,さらなる高速化を実現する.さらに,100兆自由度規模解析実現に向けた研究を推進する.これにより,エクサスケール級スパコン並びにその後を見据えた並列反復法について提案する. なお,本研究における成果は,オープンソースソフトウェアとして整備し,一般公開することで社会への還元を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
海外出張費用において為替相場の変動で当初予定から変更が生じ,導入を予定していたヘテロジニアス型計算機向けのプログラム開発環境を導入できなかったことから,導入計画の見直しを行ったため,次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
全国共同利用施設等において提供されていないメニーコア・GPU・CPUヘテロジニアス計算機を導入し,プログラム開発環境を整備する.また,コンパイラ等のプログラム開発環境を継続して整備し,研究の高効率化を行う.
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