研究課題/領域番号 |
24760064
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研究機関 | 公立はこだて未来大学 |
研究代表者 |
田中 健一郎 公立はこだて未来大学, システム情報科学部, 助教 (70610640)
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キーワード | 二重指数関数型(DE)公式 / DE-Sinc法 / 分布関数 / Fourier変換 / Kolmogorovの前進/後退方程式 |
研究概要 |
本研究では確率過程の汎関数の条件付き期待値を計算することが主要な課題である.そして,そのための有用な数値計算公式として,二重指数関数型変換(DE変換)を用いた公式(DE公式)等の解析を昨年度に行った.本研究では数値計算結果の精度を厳密に評価することを目指しているため,数値計算公式の精度評価は重要な問題である.また昨年度,この課題に必要な分布関数の計算や関連する偏微分方程式の数値解の計算のために,Fourier変換を基にした数値解法を確立する方針を立てた. 今年度は,この方針に基づき,先行研究で考案されていたFourier変換の高精度計算法が本課題に適用できることを示すと共に,精密な理論的精度解析を行うことによって,要求精度に対応するパラメータ設定を明らかにすることができた.これは計算公式の収束次数を与えると共に,精度保証への応用を可能にする結果である.さらに,この公式と高速Fourier変換のある種の一般化と組み合わせることによって,計算を高速化することができることも示した.以上は既に出版された結果であるが,さらに偏微分方程式の数値解法を確立するために,もう一つ別のFourier変換計算公式を特殊な高速Fourier変換により高速化したり,新たな高速不定積分公式を考案したりすることにより,ある種の確率過程を記述する偏微分方程式(Kolmogorovの前進/後退方程式)の数値解法をほぼ確立した.この結果は既にセミナー等で講演しており,現在論文にまとめる作業を行っている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は,昨年度立てた方針にほぼ沿った研究が行えたため,おおむね順調と評価している.具体的には,(1)条件付き期待値を求めるために用いる分布関数のFourier変換を基にした計算法の確立,(2)条件付き期待値の満たす偏微分方程式に対するFourier変換を基にした数値解法の確立である.研究実績の概要でも述べたとおり,Fourier変換を計算する数値計算公式の精密な理論的精度評価を行ったことで,精度保証法への展開についても進展があったと言える.後者(2)については,今年度幾つかの論文を発表していく予定である.
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今後の研究の推進方策 |
今年度は,本課題に関係する偏微分方程式に対する数値解法についてさらに研究を進め,論文を発表していく予定である.具体的には,既に考案したFourier変換を基にした数値解法について論文を発表すると共に,適用可能な方程式の範囲がどこまで広げられるか,つまりどのような確率過程を記述する方程式に適用可能であるか,を理論的に考察する.なお,Fourier変換を基にした解法を主に対象とするのは,これまでに我が国で考案されている高精度計算法の方程式への応用が未だなかったことや,この方法と高速Fourier変換との組合せによって,精度を損なわずに高速化を行うことができるためである.
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次年度の研究費の使用計画 |
本補助事業は26年度まで継続するものであるため. 26年度は,引き続き以下の物品・旅費を中心に研究費を使用する. [理論的考察に必要な物品] 微分方程式の理論や数値解法の専門書,近似理論の専門書や,研究論文の購入などに研究費を使用する.[数値計算に必要な物品] 25年度に購入したPCやソフトウェアの保守費用,または新たなツールボックスの購入費用として研究費を使用する.[成果発表] 成果発表に必要な旅費や学会参加費の支払いなどのために研究費を使用する.また,論文投稿にかかる費用にも研究費を充てる.
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