ポンプの急停止や弁の急閉鎖により,流体運動が圧力に変換されて管内の圧力が上昇する現象を水撃という.水撃による配管損傷が生じると有害物質が漏えいする恐れがある.水撃現象では,管壁中のたわみ波と流体中の圧力波が連成しながら伝播し,管の弾性率,直径,肉厚が水撃波の伝播速度を変化させることが知られている.水撃波の被害を低減するため,本研究では管の肉厚や材質を繰り返し変化させる方法を提案し,その有効性を検証した.水撃波の伝播速度が繰り返し変化することから,水撃波が伝播する媒体の音響インピーダンスが繰り返し変化することになり,水撃波が反射・透過を繰り返すことで,水撃波面が緩やかになる効果が期待できる.さらに近年,半導体分野で研究が進んでいるバンドギャップ効果(特定波長の波が伝播できず遮断される効果)が現れることを期待して,実験,数値解析を行った. 本実験で用いた実験系は,流体を管内に流して弁を閉じるものではなく,水中爆発における圧力履歴を模擬するための方法として開発された飛翔体を液面に衝突させる方法を採用した.また,水撃波面の周波数成分を詳しく分析するため,ウェーブレット解析を行った.ポリカーボネート製の円管(全長1 m,外径60 mm,内径52 mm)に鋼鉄製のクランプを設置して水撃波を伝播させた結果,クランプ(7個)を設置すると水撃波面の高周波成分(3-5 kHz)が減衰して波面が緩やかになる効果と水撃波ピークが20%程度減衰することを確認した.流体構造連成を考慮した数値解析の結果から,繰り返し構造を有する円管に水を充てんした管において水撃波が伝播する際のひずみ応答は,クランプ間隔をスカラクの理論から予想される波面の平均周波数に基づく波長程度(88 mm)とすることで実験と同様の減衰効果を確認した.また,クランプ間隔が88 mm以下のときには減衰率は低下することを確認した.
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