研究課題/領域番号 |
24760075
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
柳谷 隆彦 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10450652)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 圧電薄膜 / 圧電性評価 / 配向制御 / イオンビーム支援成膜 |
研究概要 |
圧電性が最も大きくなると考えられる相境界付近のSc濃度約36-41 %,さらにSc濃度を増加させたSc濃度約47-62 %のScAlN薄膜を作製し,薄膜の電気機械結合係数,音速,比誘電率を評価した. Sc粒をAlターゲットの上に置きスパッタ成膜する粒スパッタ法を用いてSc濃度36−62 %のScAlN薄膜を作製した.膜厚は5-6μmとなるように成膜時間で調整し,膜厚は触針段差計により測定している.基板には石英基板上に下部電極Ti (ロッキングカーブ半値幅2.5°~3.0°程度)を直流スパッタ成膜したものを用いた.薄膜内の組成比はEDXにより評価した.X線回折法によって薄膜の結晶配向性を評価したところ,すべての試料において(0002)ピークが観測され,c軸が基板に対して垂直に配向していることを確認した. 薄膜のkt値と音速を評価するために,上部電極/圧電薄膜/下部電極/基板構造のHigh-overtone bulk acoustic resonatorを作製し,ネットワークアナライザを用いて縦波変換損失を測定した.変換損失の実測曲線と等価回路モデルにより計算した理論曲線を比較することで, kt値と音速を決定した.Sc濃度0-41 %の範囲ではSc濃度が増加するにしたがいkt値は増大した.相境界付近と考えられるSc濃度41 %において,kt値はもっとも大きいkt = 0.35となり,AlN単結晶のkt値の約1.2倍となった.一方Sc濃度47-62 %ではkt値は急減した.このkt値の減少は47 %以上のScAlN薄膜では六方晶から圧電性のない立方晶へ相転移したためと考えられる.縦波音速では,0-47 %まではSc濃度が増大するにしたがい音速の低下が見られた.Sc濃度の増加により弾性が低下することがわかる.また,Sc濃度50 %以上では縦波音速は増加に転じた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
計画書どおりScAlN薄膜について配向膜を作製し、X線回折法、エネルギー分散型X線分析から再現性良く狙った膜質の試料が得られている。本研究独自のHigh-overtone bulk acoustic resonatorを使った定量的な圧電性および音速の抽出も順調に進んでいる。さらに予想通りSc濃度の増加に伴う圧電性の向上、音速の低下も確認することができている。
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今後の研究の推進方策 |
計画書どおり、1.ドープAlN平行配向膜の合成、2. 横波圧電性、音速、音速温度係数の測定、3.センサMEMS共振子の設計、作製、4.横波型弾性表面波の励振効率の測定、5.液体中の励振およびセンサ感度を測定、6.高温環境におけるセンサ特性、8.Intrinsicな物理定数の測定など、について研究を進めていく。 さらにイオンビーム照射スパッタ成膜が可能なチャンバーを新たにもう1つ立ち上げ、より高い真空度のクリーンな環境で、イオンビームの照射角度等の自由度も高い成膜環境を整える。これによりさらに高品質な巨大圧電性薄膜の成長を目指す。また高温環境で圧電性を測定できる設備も整備する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
高温環境で圧電性の測定を行うために加熱ステージを購入する。また消耗品として成膜用の材料と基板を購入する。イオンビームガン設置に伴って必要が生じるステンレスフランジ類や基板を設置する治具に使用するステンレス加工部品も設計、購入する。真空導入部品やICFフランジ用のガスケットも消耗品として購入する予定である。
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