研究課題
Sc濃度の異なるc軸傾斜配向ScAlN膜を作製し、横波型のセンサの感度を決定づける薄膜の擬似横波モード電気機械結合係数k15を測定した。c軸傾斜膜を形成時、ターゲットからのスパッタ粒子が基板に到達する際の入射角度がc軸の配向に影響を及ぼすと考えられる。そこでターゲット面に対する角度が0度、30度、60度、90度となるように基板を配置し、試料を作製した。試料の結晶配向性は(0002)面極点X線回折法により評価した。その結果、基板角度60度で形成されたScAlN薄膜は、極の鋭い集中がみられた。c軸傾斜角度が31ºであり、かつc軸面内方向は一方向に配向していることがわかった。c軸傾斜角度は基板角度0度の試料では3.3–14.2º、基板角度30度の試料では11.0–16.8ºとなり、さほど傾斜しなかった。それに対して、基板角度60、90度の試料ではそれぞれ31.3–31.7º、38.8–42.1ºと大きく、基板角度が大きくなれば、c軸傾斜角度も大きくなることがわかった。膜のk15値を測定するために、作製したすべての膜において上部電極Au膜/ ScAlN薄膜 / 下部電極Al膜/ 石英基板の共振子構造を作製した。基板角度60度の試料において、最も大きなk15値が観測され、k15^2値は9.6 %にも達した。今回作製した薄膜は多結晶薄膜であるにもかかわらず、このk15値はAlN単結晶の値 (k15^2= 5.3 %、c軸傾斜角度 = 30º) の約180%となり、大きく増幅している。今回得られたk15値は常誘電体材料で報告されているものでは最も大きな値であり、ワールドレコードである。
1: 当初の計画以上に進展している
今回c軸が31°傾斜配向したScAlN薄膜で得られたk15^2値は9.6 %にも達している。常誘電体材料で報告されているものでは最も大きな値であり、ワールドレコードである。この薄膜は一般的にk15が大きな強誘電体材料に比べて1桁近く誘電率と音響減衰が小さいこともわかってきており、本研究の結果から、センサ応用やエネルギーハーベスティングデバイス応用への期待が大きく増した。
今後は、センサデバイスの実現に向けてScAlN薄膜のk15および横波音速の濃度依存性および共振子周波数温度係数の評価について研究を推進していく。さらに申請者が新たに圧電性増幅発見したYbGaN系材料についても全貌を明らかにする。
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