研究課題
横波は液体/固体境界において,液体中へのエネルギー漏洩が小さいため,液体中でも共振することができる.そのため液体の粘性,導電率センサや抗原抗体反応センサに応用することができる.これらのセンサ応用の際には,高いすべりモード電気機械結合係数k15を持つ膜が要求される.RFマグネトロンスパッタ装置を用いてc軸傾斜ScAlN薄膜を作製した.ScAlN薄膜を形成するために,Alターゲット上にSc粒 (99 %,高純度化学) を配置した. Sc粒量を変化させたScAlN薄膜の結晶配向性を極点X線回折法により評価した.その結果、Sc粒量0-0.75 gの低Sc濃度の薄膜では,基板端から距離が離れるほどc軸傾斜角度が大きくなる結果となった.Sc粒量1.0-1.5 gの薄膜では基板端からの距離が離れてもc軸傾斜角度はあまり変化しない.それに対してSc粒量1.75-2.00 gの高Sc濃度の薄膜では基板端から距離が離れるほどc軸傾斜角度が小さくなる結果となった.上記で準備した薄膜試料を用いて、共振子を作製し,変換損失を測定,各試料のk’15^2及び擬似横波速度を推定することで,そのSc濃度依存性を評価した.Sc粒量に対するc軸傾斜ScAlN薄膜のk’15^2値と擬似横波音速変化を測定した結果、Sc粒量が0-2.00 gの範囲ではSc濃度が増加するにしたがいk’15^2値は増大した.相境界付近と考えられるSc粒量2.00 g (c軸傾斜角度39°) において, k’15^2値はもっとも大きい14.6 %となり,AlN単結晶の最大k’15^2値 (k’15^2 = 5.3 %,c軸傾斜角度 = 30°) の約280 %となった.擬似横波音速では,Sc粒量が増大するにしたがい,音速の低下が見られた.合金 (Sc/Al=37/63) を用いたScAlN薄膜 (c軸傾斜角度 = 38°) のk’15^2は16.8 %と推定された.この値は,AlN単結晶の最大k15値の約320 %であり、薄膜を使って発生した横波の変換効率では世界で最も大きな値である。
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