研究課題/領域番号 |
24760078
|
研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
佐藤 克也 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 講師 (10403651)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 細胞力覚 / 骨芽細胞 / 伸展刺激 / 力学的刺激 / バイオメカニクス / MEMS |
研究概要 |
本年度は,細胞伸展マイクロデバイスの設計変更により,伸展刺激付与時のピントずれを概ね抑制することに成功した.これにより,初期の目標であった単一細胞レベルでの伸展刺激応答を高時間・空間分解能でその場観察することに成功した. これまでの報告例では,伸展刺激を受ける細胞の応答観察を行う場合に,蛍光画像一枚を取得する時間間隔は数秒~数分オーダーの時間分解能であった.これに対して,本研究課題では1秒間に10フレーム以上のビデオ撮影に成功した.これは1枚あたり100m秒オーダーの時間分解能であり,分解能を10倍以上に高めることができた. この成果によって,細胞応答の中でも比較的速い応答である細胞内カルシウムシグナル応答について,その発生起点の特定や細胞内での伝播の様子をその場観察することが可能になり,細胞が伸展刺激を感知する機構の解明に向けて非常に重要な事件観察データを取得することが期待できる. また,細胞伸展マイクロデバイスを駆動する制御装置を開発した.これまでは油圧式三次元マイクロマニピュレーターを使用して手動によりデバイスを駆動していたが,これをヒンジ式ピエゾアクチュエーターを応用した駆動制御装置に置き換えた.これにより,引張りひずみ量ならびにひずみ速度について,より定量的に制御できるようになった.また繰り返し伸展刺激も付与可能となり,様々な力学刺激付与条件下における細胞応答の検討が可能となった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画していた項目のうち,細胞伸展マイクロデバイスの設計変更によるピントずれの抑制は計画通りに達成され,伸展刺激を受ける細胞の高時間・空間分解能でのその場観察が実現された.しかしながら,当初計画していたカルシウムイオン蛍光指示薬Fluo 3を用いた細胞応答観察では,伸展刺激付与に対する細胞のカルシウムシグナル応答を蛍光輝度変化として捉えることができなかった.これに対して,細胞に導入する蛍光指示薬の濃度や伸展刺激付与の際の引張りひずみ量,ひずみ速度などを変化させ,検討したが本年度内において細胞応答を可視化して観察することはできなかった.そのため,やや遅れているとの自己評価とした.
|
今後の研究の推進方策 |
本年度は,伸展刺激付与に対する細胞のカルシウムシグナル応答を蛍光輝度の変化として可視化して観察することができなかった.これは伸展刺激付与に起因するカルシウムイオンの濃度変化が想定よりも小さい可能性が考えられる.加えて,伸展刺激付与時のピントずれは抑制後も数ミクロン程度は発生しており,これが細胞応答観察における蛍光輝度変化に影響を与える可能性があるとの指摘を受けた.そのため,研究計画を一部変更し,二蛍光色素による蛍光輝度比観察が行える実験系を構築することとした.蛍光輝度比観察系の導入により,観察時のSN比の向上が期待でき,さらにピントずれに起因する蛍光輝度変化の影響を除外することができるため,伸展刺激付与に対する細胞のカルシウムシグナル応答を捉えることが可能になると考えられる.
|
次年度の研究費の使用計画 |
本年度からの繰り越し金と,次年度の物品費から研究計画の変更により必要となった蛍光輝度比観察系の導入に必要な装置を購入する.研究計画が当初のものよりやや遅れているため,次年度に計画していたシミュレーションによる細胞内微細構造の変形挙動解析については実施内容を再検討し,課題申請時計上していたコンピューターシミュレーション用ワークステーションの導入を見直す.具体的には変形挙動解析が基礎的なモデル検証にとどまる可能性があるため,導入する計算機を安価なPCへと変更し,その差額を蛍光輝度比観察系のための物品費とする.
|