1.形状記憶合金の高疲労強度化の研究 昨年度は、表面を電解研磨したTi-Ni形状記憶合金の疲労特性を調べ、従来研究した機械研磨を施した形状記憶合金素子の疲労特性との比較および破壊挙動を調べた。その結果、すべての破壊の起点が材料表面に存在することが明らかになった。そこで本年度は、表面での破壊の起点の発生を遅らせる目的で、表面状態を違えた各資料に対し表面ナイロンコーティングを施した試料を製作、疲労特性に及ぼすナイロンコーティングの影響を調べた。その結果、材料を製作したままの未研磨剤と機械研磨を施した材料において、ナイロンコーティングにより疲労特性が大幅に向上することが明らかになった。一方、電解研磨を施した材料においてはナイロンコーティングによる特性向上が殆どないことがわかった。この結果から、ナイロンコーティングにより、電解研磨などの複雑な処理を行わない場合でも、簡易に形状記憶合金の疲労特性を大幅に向上させられる方法を明らかにした。 2.形状記憶合金熱エンジンの研究 昨年度は、ワンウェイクラッチやギアなど、駆動損失の大きい部品を廃止したベルト駆動による渦巻きばね型形状記憶合金熱エンジンを製作し、その特性評価を行った。本年度は、ベルト駆動による渦巻きばね型熱エンジンの性能向上のための改善を行い、ベルト駆動式が従来のギア駆動式に対し約30%性能向上したことを確認した。また、新しく強制冷却プーリー型、遊星駆動型の形状記憶合金熱エンジンを試作。その動作特性についても調べた。現在、遊星駆動型は連続駆動には至っていないが、強制冷却プーリー型においては良好な動作を確認、その特性評価を行っている。
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