前年度は,提案した新型超音波接合法への応用をねらいとして,表面処理方法の検討を行い,良好な接合性を示すアルミニウム表面の微細構造の特徴を調べた.しかし、十分な接合強度を得ることができていないため,本年度はさらにこの表面処理方法の検討を中心に行った. 本年度の表面処理方法は,ナノサイズの微細孔を設けてアンカー効果を利用する方法(微細孔処理)として,昨年度も検討を少しだけ行ったリン酸陽極酸化処理とした.これにより形成されるポーラスアルミナの微細構造について,昨年度よりも詳細な検討を実施し,良好な接合界面を得る構造の解明を試みた.微細孔の形成は,市販のアルミニウム板(A6063)を8wt%リン酸(30℃)に浸漬し,0.07A,30Vで1~25min電解させることで行った.接合強度については,接合が困難となりやすい提案超音波接合法での検討の前段階として,それよりも容易に接合が可能である射出接合により得られた試験片で評価した.この検討より得られる知見をもとに,超音波接合法への応用を試みることとした. 結果として,アルミニウム表面に形成されたポーラスアルミナは数百nm周期の凹凸に微細孔を形成するグループ性をもつことを明らかとし,累積孔数(孔径)の面密度が最大となるとき,高接合強度となることがわかった.また,微小硬さ試験により力学特性マッピングを行った結果,接合界面近傍でPPSが軟化していることが明らかとなり,それより,射出成形時に発生したせん断熱が樹脂を軟化させ,微細孔への浸入を容易にするという接合メカニズムを推定することができた.しかし,この知見をもとに,得られた最適条件で表面処理したアルミニウムを用いて提案超音波接合を行ったが,十分な強度は得ることができず,課題を残す結果となった.
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