研究課題/領域番号 |
24760084
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
大宮 正毅 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (30302938)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | アクチュエータ / 高分子 / 電解質膜 / 疲労 / 損傷 |
研究概要 |
本研究では、イオン導電性高分子アクチュエータの疲労損傷メカニズムを解明することを目的としている。イオン導電性高分子アクチュエータは、高分子電解質内部に含有された陽イオンと水分子の移動によって変形を生じるが、長期間繰り返し変形させると、変形応答特性が次第に悪くなる。しかし、その応答劣化メカニズムについて詳細に検討した例はなく、イオン導電性高分子アクチュエータの疲労損傷形態とその発生メカニズムについて明らかにすることは、イオン導電性高分子アクチュエータの実用化に向けて大変重要な課題である。そこで、平成24年度は、機械的疲労特性に着目し、その疲労損傷メカニズムを解明することで、アクチュエータの応答劣化の原因を明らかにすることを目的とした。 まず、イオン導電性高分子膜Nafionに無電解メッキ法で、パラジウムおよびパラジウム合金を成膜し電極膜の製作を行った。従来の研究では、無電解メッキを行う過程で、発生する水素、内部応力により、パラジウム表面にクラックが入ることがあった。しかし、成膜温度、溶液濃度を管理することで、表面にクラックのない電極を成膜できるようになった。 次に、ナトリウム水溶液中で、イオン導電性高分子アクチュエータの耐久試験を行った。このとき、加える電圧振幅を一定とし、アクチュエータの変形をレーザー変位計にて測定した。また、イオン導電性高分子アクチュエータのインピーダンス測定を行い、表面電極抵抗、高分子電解質内部のイオンの移動抵抗について検討を加えた。その結果、繰返しサイクル数が増えるとともに、電極表面にき裂が発生し、インピーダンスが増加する傾向がみられた。しかしながら、現状では電極、電解質膜の損傷のどちらが支配的かについて判断がつかないため、引き続き検討を行っていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イオン導電性高分子に無電解メッキ法で電極を成膜する際に、初期欠陥を少なくする必要がある。そのため、表面にクラックのない電極を成膜できるようになったことは、今後の実験を行う上で、重要な成果であると考えている。また、イオン導電性高分子アクチュエータの劣化と、表面電極、電解質膜の損傷状態との関連性を定性的に把握することができた点で、研究計画はおおむね順調に進展している。一方、耐久試験を行う際のパラメータをどのように決定するかについては試行錯誤の段階であり、早急に確立していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、耐久性能に影響を及ぼすパラメータを選定し、イオン導電性高分子アクチュエータの耐久試験を実施していく。また、試験片の表面や破面の電子顕微鏡観察を行い、き裂発生や進展の有無について検討する。その際、電極金属膜と高分子電解質膜の損傷を区別するために、耐久試験の途中で試験を中止した場合の試験片の観察も同時に行う。 また、イオン導電性高分子膜単体の疲労試験もあわせて行う。これは、イオン導電性高分子アクチュエータが、高分子電解質膜と電極金属からなる複合膜であるため、まずは、高分子電解質膜の損傷形態について明らかにしておく必要があるためである。 以上より、イオン導電性高分子アクチュエータの機械的疲労特性について、その損傷メカニズムを明らかにすることを目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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