研究課題/領域番号 |
24760093
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
長田 俊郎 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, 研究員 (50596343)
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キーワード | 自己治癒 / 耐熱セラミックス / 破壊力学 / 高温酸化 / 有限要素解析 / イメージベース |
研究概要 |
生命体の主な構造用部材である“緻密骨”が持つ改変期を含む自己治癒機能を次世代航空機エンジンの静翼等の候補材である酸化物系セラミックス基複合材に発現し、その信頼性を抜本的に改善することが本研究の目的である。本研究では、セラミックスの改変期を含む自己治癒の強化機構の解明及びそれによる強度回復機構のモデル化を試みる。これにより、完全な強度回復に必要な“改変期を含む自己治癒”の提案と、次世代自己治癒セラミックス設計指針の構築を目指す。特にH25年度は、H24年度に確立した、き裂治癒部の直接観察・分析手法を用い、炎症期・修復期・改変期の直接観察による強度回復機構の解明及びモデル化を試みた。 具体的には、強度回復挙動の調査、自己治癒挙動の直接観察、有限要素法による強度回復シミレーションを行った。この様に、治癒温度及び時間に伴うき裂治癒物質の構造・組成・力学特性の変化を直接観察することで、自己き裂治癒:炎症期・修復期・改変期による強度回復機構を解明及びモデル化を試みる。得られた結果を参考にし、最終年度に行う「完全な強度回復に必要な“改変期を含む自己治癒”の提案と、それを実現する次世代自己治癒セラミックス設計指針の構築」を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アルミナ/炭化ケイ素複合材の自己治癒による強度回復挙動に及ぼす治癒部の構造・組成変化の影響を直行型SEM/FIBを用いて解析を行った。得られた接合過程における治癒部の構造および炭化ケイ素の酸化反応速度を参考に、強度回復速度の理論モデルを提案した。これらモデルを用いることで、任意のき裂長さ、治癒温度、治癒時間、酸素分圧、炭化ケイ素複合量・サイズ等を用いることによって、き裂治癒による強度回復速度およびき裂完治速度を倍半の精度で予測可能となった。更に、ジェットエンジン(CF6)の形状を取り込んだ簡易的なバーチャルジェットエンジンを作製し、タービン部各段静動翼における、温度・酸素分圧を予測した。これらを組み合わせることで、タービン翼として使用する際の最適な自己治癒材料の材料設計が可能となった。また、強度回復モデルの精度向上のため、直行型SEM/FIBで得られた治癒部の三次元イメージをベースとして有限要素解析による強度予測を行っている。これについては、手法は確立済みであるが、現在進行中であるため、当初の計画はおおむね順調に進展していると評価される。
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今後の研究の推進方策 |
現在まで、セラミックスによる自己治癒は非酸化物である炭化ケイ素の高温酸化のみが注目されてきた。しかしながら、申請者が予測したように、緻密コツにおける自己治癒と同様に反応期:高温酸化、修復期:母相との反応による局所融解(血液の役割)および凝固(仮骨)、更には改変期:アモルファスから結晶への相変化、を通してき裂は完治されることが明らかとなった。従って、今後は現在のように酸化高活性の非酸化物を探索するのみでなく、非酸化物と母相との組み合わせや、第三元素の添加を自己治癒材料設計に取り入れることを目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度得られた成果から、自己治癒材料設計する上で、第三元素の添加等が必要であることが明らかになりつつある。これらを考慮し、新たなセラミックスの焼結を検討する必要があった。このためにセラミックス焼結および試験片加工1回分に該当する金額を次年度に繰り越した。 現在まで、既存のセラミックスの治癒機構を調査していたため、焼結は外注していた。しかしながら、様々な条件で焼結を行うためには、自前で焼結することが極めて重要である。繰り越した金額は、当機構の共用の焼結装置を使用するために必要なセラミックス焼結用冶具等の購入に当てる予定である。
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