フランジブル弾丸の衝突破壊過程について基礎的な実験を行い,その破壊特性についての知見を得た.弾丸の入射速度(130~350m/s)に対して,破砕した弾丸破片の累積質量分布を調べると,ほとんどの試行において先行研究の脆性物質の衝突破壊時に見られるような,べき乗則が再現した.しかし,一部の試行ではべき乗則に沿って連続的に破片質量が変化していないものがあった.実験結果から,破片分布の傾きは衝突速度には依存しないが,最大破片群の質量は入射エネルギーに反比例する傾向があったため,最大破片群の質量から入射速度をある程度推定することが可能であると考えられた. 次に,ターゲットの材料物質を変えて衝突実験を行った.ターゲットとしてアルミ板と鋼板を用いて比較を行ったが,アルミ板では鋼板の場合よりも累積質量分布のべきの傾きは緩やかになり,最大破片質量も3倍程度大きくなった.べき乗則の切片は衝突圧力で決定されるが,べきの傾きは衝撃インピーダンスの違いによる応力波の干渉位置によって変化すると考えられた.一次元的な計算によると,ジオメトリー(板厚)の効果や応力波速度の違いによって干渉位置が異なることが確認できたが,ターゲット物性値とべきの傾きの定量的な関係を明らかにするには,今後実験や2次元数値計算によるさらなる検証が必要である. 加えて,破片の飛散速度計測を試みた.時々刻々の破片の位置を2台のカメラ間で対応付けることによって,三角測量の原理で3次元位置を計測した.フランジブル弾丸の破片群は衝突直後に高速で飛散する微小破片とある程度の質量を持って比較的低速で飛散する大きな破片群に大別できる.小さな破片群の質量見積もりはまだ改良の必要があるが,大きな破片群は入射速度に拘わらず,入射速度に対して5~40%程度で飛散しており,入射エネルギーの半分以上が弾丸の破砕に使われた可能性がある.
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