エッチング液中でシリコン等をパルスレーザ溝加工するプロセスについて,25年度は24年度の成果に加え,第1にSiCへの加工を実施した.空気中よりも,水中で加工した方がレーザ加熱による溶融・飛散物が少なく,さらに強酸化剤である二クロム酸カリウム溶液中で加工した方が加工溝が深くなり,水中よりも明瞭な溝が得られることが分かった.また繰り返し数の低いレーザではレーザ出力を上げると1パルス当たりのエネルギー,ひいてはパルス発光時の光パワーが高くなりすぎるために溝形状が乱れるのに対し,高繰り返しレーザを用いた場合にはレーザ出力を高くしても溝形状の乱れは認められなかった.ただし,高レーザ出力の場合にはSiCの高い熱伝導性のためにレーザ光の照射されていない領域でも材料が除去され,溝幅が拡大することが認められた.なお,研究計画では実施予定であったサファイアについては透明材料であることから有効な加工法を研究期間内に見出すことができなかった. 第2にシリコンへの加工について,購入備品のハンディークーラーおよび温度コントローラを用いてエッチング液を冷却して温度を一定に保ちながら循環させることで,レーザ出力が大きい場合に溝の周囲が過剰にエッチングされたり溝幅が拡大したりする問題,加工毎の溝幅・溝深さのばらつきが大きく再現性が低い問題がそれぞれ大きく改善された.さらに加工された溝の表面および断面を評価し,エッチング液中で加工することにより空気中,水中で加工した場合に比べて表面の溶融・再凝固層が少なくなることを見出した.
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