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2012 年度 実施状況報告書

植物細胞を利用した微細加工技術の確立と応用に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 24760101
研究種目

若手研究(B)

研究機関大阪大学

研究代表者

洞出 光洋  大阪大学, 基礎工学研究科, 特任助教 (30583116)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワードマイクロ・ナノデバイス / マイクロマシン / ナノマシン / 精密部品加工 / 生体機能利用
研究概要

本研究課題では生物学の知見、特に植物の持つ生殖メカニズムに着目し、生体由来の植物細胞を材料の一種として利用する微細加工技術の確立を目指していく。花粉管・胚珠といった微小でシステム化された組織を利用するボトムアップの手法を確立することにより、低コストでナノスケール精度を実現するマイクロ・ナノデバイスの開発技術に繋げることが目的である。特に、容易なスケールダウン化、高アスペクト比・三次元・任意形状の製作技術は微細加工学において非常に重要性の高い技術であるため、これらの技術へ直結可能な成果を出したい。
当該年度においては、植物細胞を用いた微細パターニングを行う上で、最も重要な項目の1つである、花粉管細胞の単離、挙動確認、アッセイデバイスの最適化を重点的に行った。花粉管細胞の直径サイズよりも狭いスリット内で伸長させたところ、細胞が壊死することなく変形しながら伸長していく様子が確認できた。これは、通常の半導体プロセス等で行う、スピンコートによる膜厚を均一にさせ、その後リソグラフィ技術によってレジストをパターニングする工程と同じことが可能になったといえる。スリットや狭所流路内で伸長させたところ、壁面との接触により伸長速度が抑制されたが、伸長速度の測定や挙動を合わせて計測したことにより、最適パターニング条件の提示が行えた。また、上下方向への蛇行を抑制しつつ、細胞同士が交差する最適スリットサイズの提示を行った。このことにより、1次元方向のみのパターニングだけでなく、2次元方向へのパターニングを可能にした。
植物細胞を使って、数ミクロンスケールでかつ高さ10μm程度を有する、厚膜レジストパターニングと同等の技術確立を達成することができた。本研究成果で得られた実績の一部は国際学会μ-TAS2012において報告した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の具体的な目的として、花粉管・胚珠といった微小でシステム化された組織を利用するボトムアップの手法を確立することにより、低コストでナノスケールを実現するマイクロ・ナノデバイスの開発技術に繋げることを挙げている。そこで、本研究目的を達成させるために計画した具体的な研究項目として、1)植物細胞を利用した金属パターニング・表面凹凸形状を有する微細構造体等の製作、2)花粉管誘引物質を利用した任意形状のパターニング、この2項目を掲げた。
まず、表面凹凸形状を有する微細構造体等の製作を行うために、花粉管細胞を用いて平面パターニングが可能かどうか、細胞の伸長方向の制御方法、挙動といった、必要不可欠な情報取得に取り組んだ。その結果、通常の半導体プロセス等で行う、スピンコートによる膜厚を均一にさせ、その後リソグラフィ技術によってレジストをパターニングする工程と同じ技術確立に成功した。特に、花粉管細胞の直径サイズよりも狭いスリット内で伸長させたところ、細胞が壊死することなく変形しながら伸長していくという情報は、表面凹凸形状を製作する上での、構造体高さ制御に直結する知見である。
アッセイデバイスの最適条件の提示により、伸長方向を制御することに成功した。さらに、微小スリットや微小流路内での花粉管伸長の挙動や知見を多く取得することに成功した。この知見により、花粉管細胞を2次元的にある程度伸長方向や伸長速度を制御に期待が持てる。すなわち、花粉管誘引物質を利用した任意形状のパターニングを行う上で、かなり有益な情報を得ることができたといえる。
これらのことから、当初掲げた具体的な研究項目を達成するために、必要な知見を十分所得することができ、順調に進展していると考えられる。

今後の研究の推進方策

本研究目的を達成させるために計画した具体的な研究項目として、1)植物細胞を利用した金属パターニング・表面凹凸形状を有する微細構造体等の製作、2)花粉管誘引物質を利用した任意形状のパターニング、この2項目を掲げている。これまでに得られた結果や知見をもとに、1)金属パターニングに必要な技術確立や重要となりうる知見の取得、2)表面凹凸形状等の高アスペクト比・三次元微細構造体の製作、これらの項目に関して取り組みたいと考えている。
特に平成24年度に得られた、アッセイデバイスの最適化により、ピンコートによる膜厚を均一にさせ、リソグラフィ技術によってレジストをパターニングする工程と同じ技術確立に成功したため、この知見を利用してリフトオフプロセスで見られるような、レジストの逆テーパ構造に相当するパターニングができないかと考えている。花粉管細胞の場合断面が円形形状であること、そして狭スリットへ変形しながら伸長していること、この2点を考慮すると、逆テーパ構造のパターニングが容易に行える可能性が極めて高いと考えた。花粉管細胞の断面が円形形状であることを考えると、その直径よりさらに狭い線幅のパターニングにも期待でき、容易なパターニングのスケールダウン化の検討も行いたいと考えている。
また花粉管細胞を最適なスリット高さを実現するアッセイデバイスを利用して、任意に花粉管細胞を交差させたりするなどして凹凸形状の製作を行いたいと考えている。三次元形状の製作が可能かどうか、特筆すべきて点だけでなくデメリットとなる項目についても詳細に調査したいと考えている。
これらの研究成果から当初の目的である、1)植物細胞を利用した金属パターニング・表面凹凸形状を有する微細構造体等の製作、2)花粉管誘引物質を利用した任意形状のパターニング、に必要な知見を得ることができると考えている。

次年度の研究費の使用計画

本研究では、基本的にそのほとんどを所属研究機関内で行うことを計画している。研究を遂行する際に必要となる、アッセイデバイスの製作や、金属パターニングなどにおいては、半導体プロセス等の微細加工装置やその施設が必要となる。これらの多くは、大阪大学産業科学研究所内の施設を利用して行う予定である。またプロセス遂行において所属研究機関内で行えない場合は、他の施設の利用を検討している。大型装置の購入等は考えていないが、これらの施設利用料は消耗品等を研究費から支払う必要がある。
また、本研究で用いる植物細胞はトレニアという花を主に用いている。これらを定期的に準備する必要があるため、生物実験を行う上で最低限必要となる消耗品等も頻繁に用意することがある。
上記のとおり、研究費の多くは消耗品等の購入に充てたいと考えている。また、情報交換や学会で研究成果を公表するために必要な、出張経費、論文発表の際の諸経費を計上している。なお、経費の主な用途である消耗品に関しては、培地・ディッシュ・プラスチック容器・ピペット・試薬等の生物実験で用いるもの。アッセイデバイス製作と加工実験で用いるための、基板(ガラスウエハー・シリコンウエハー・SUS基板)・試料(レジスト・アクリル樹脂・シリコーン樹脂)・試薬等の加工実験で用いるもの、これらが主な消耗品である。また、CADソフト、数値計算ソフトの購入しそれらを利用することで、データの取得や最適条件の提示に繋げたいと考えている。
これらを本研究補助金から支出することは、関連法規等に照らしても、十分妥当であると考えている。なお、これまでに行った類似の研究で必要となった経費を基に算定した。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2012

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] PLANT-ON-A-CHIP MICROFLUIDIC-SYSTEM FOR QUANTITATIVE ANALYSIS OF POLLEN TUBE GUIDANCE BY SIGNALING MOLECULE: TOWARDS CELL-TO-CELL COMMUNICATION STUDY2012

    • 著者名/発表者名
      Mitsuhiro Horade, Yoko Mizuta, Noritada Kaji, Tetsuya Higashiyama, and Hideyuki Arata
    • 学会等名
      Micro TAS 2012
    • 発表場所
      Okinawa, Japan
    • 年月日
      20121028-20121101

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公開日: 2014-07-24  

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