研究課題/領域番号 |
24760107
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
岡本 康寛 岡山大学, 自然科学研究科, 助教 (40304331)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 超短パルスレーザ / 微細溶接 / 半導体材料 / シリコン / ガラス / 接合 / 機械強度 / せん断強度 |
研究概要 |
半導体基板に作製されたMEMSや各種センサを安定的に利用するためには,ガラス基板による気密封止が必要不可欠である.これには陽極接合が多く用いられているが,基板全体の加熱や高電圧を印加する必要があることから,デバイスへの負荷が大きい.そこで本研究では,超短パルスレーザを用いた直接接合法を検討し,半導体基板とガラス材料を必要な箇所だけを直接接合する技術の開発を行う.本手法では半導体材料とガラスの接触状態がプロセス特性に影響を及ぼすことら,安定的なプロセスおよび機械強度評価を目指して,平成24年度は接合サンプルの準備手法,オプティカルコンタクト力が影響しない機械強度の評価手法に関して検討を行った. 重ね合わせ溶接を実施するためには半導体材料とガラス基板の接合面に異物が混在しないことが重要となる.そのためのサンプル洗浄方法,および接合面への異物混在低減を簡易的なクリーンベンチ内で実施する手法を確認できた.また,エッチング,RIEと先の異物混在低減手法を合わせて,溶接ビード以外の接触面を低減しつつ,良好な重ね合わせ面を有するサンプルを準備するための手法を確立できた.これにより,重ね合わせ溶接されたサンプルの機械強度を評価する時に,オプティカルコンタクト領域の影響を低減でき,接合継ぎ手の強度を適切に評価できる.また,せん断試験時におけるサンプルの回転を抑制するために,リニアガイドを備えた剪断試験用ジグを設計,製作した.このジグ単体の摩擦によって生ずる荷重は0.1N程度と低く,ねじれを抑えて,幅数十µmの溶接ビードのせん断強度をより正確に測定することが可能となった.上記の様な手法を用いてシリコンとガラスの接触面積を変化させてせん断強度を評価したところ,オプティカルコンタクト領域を低減することで良好な接触状態が得られ,溶接ビードのせん断強を適切に評価することが可能となった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の研究実施計画であげていた「サンプル準備方法」を確立でき,「剪断試験ジグの設計と製作」も完了した.これにより「オプティカルコンタクト力と溶融接合部の破断荷重の検討」が可能となり,溶接ビードのせん断強度を適切に評価できたことから,おおむね順調に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
おおむね順調に進展していることから計画通り,平成25年度は計画通り,以下の検討を行う. (1)レーザ光照射条件と表面状態の検討 平成24年度(1)で準備したサンプルを用いてピコ秒レーザを用いて溶融接合実験を行い,ガラス側からレーザ光照射部の状態を観察,評価する.それにより,ビード幅および半導体材料表面におけるビードの表面状態に関する知見を得て,フルエンスとの関係を明かとする.また同時にプロセス中の透過光をパワーメータで,反射光を積分球により測定し,サンプルへのレーザ光エネルギー吸収量を算出する. (2)レーザ光照射条件と溶融領域の検討 超短パルスレーザによる溶融接合において,クラックの発生しないレーザ光照射条件の探索とそのメカニズムを明らかにすることが必要である.そのために,集光スポット径,パルスエネルギー,走査速度,パルス繰り返し数等のレーザ光照射条件が溶融領域とクラック発生状態に及ぼす影響をレーザ光照射実験より明らかにする.レーザ光走査方向に垂直に接合面を観察するために,アルゴンイオンビームによる研磨を施すことで,脆性材料である半導体材料とガラス材料の組み合わせでも良好な観察面を得て,詳細な検討を可能とする.そして,EDSマッピングにより接合界面近傍における材料分布状態を明かとし,接合プロセス解明のための知見を得る. また,平成26年度は「接合継ぎ手の機械強度評価」と「熱応力解析による内部応力の検討」を行い,超短パルスレーザを用いた信頼性の高い半導体材料とガラス基板の直接接合技術に関する手法を明かとし,得られた知見を整理し,成果の公表,発表を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
レーザ光照射条件との関係性を明らかにするための実験を行うことから,そのために必要な光学部品,サンプル材料等の消耗品費が必要となる.また本研究の議論を深めるために学外の機関が保有する特殊なレーザ光走査システムを用いた実験を行うことから,それにともなう旅費等を主な経費として計画している. 平成25年度においては具体的に物品費800,000円,旅費300,000円,その他100,000円である.物品費としては50万円以上の備品は無く,集光レンズ等の光学部品,実験試料であるガラス,半導体基板,評価面を得るための研磨剤等である.旅費に関しては,主に実験を行うための移動・滞在費を計画している.
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