研究課題/領域番号 |
24760107
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
岡本 康寛 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (40304331)
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キーワード | 超短パルスレーザ / シリコン / ガラス / 微細溶接 / 機械強度 / 接合 / せん断強度 / 半導体材料 |
研究概要 |
半導体基板に作製されたMEMSや各種センサを安定的に利用するためには,ガラス基板による気密封止が必要不可欠である.これには陽極接合が多く用いられているが,基板全体の加熱や高電圧を印加する必要があることから,デバイスへの負荷が大きい.そこで本研究では,超短パルスレーザを用いた直接接合法を検討し,半導体基板とガラス材料を必要な箇所だけを直接接合する技術の開発を行う.本手法では半導体材料とガラスの接触状態がプロセス特性に影響を及ぼすことら,安定的なプロセスおよび機械強度評価を目指して,平成25年度は主に接合プロセスの条件を考えるためにレーザ光照射条件と表面状態,およびレーザ光照射条件と溶融領域に関して検討を行った. プロセス条件を検討する上で,集光直径を一定としてパルスエネルギー,パルス繰り返し数,および走査速度を変化させ,ガラス基板側からレーザ光照射実験を行った.nsレーザと比較してpsレーザの方が少ないパルスエネルギーにてシリコン表面で吸収が始まることから,それにより単位長さ当たりの投入エネルギーを小さくでき,クラックフリーのガラスとシリコンの接合が可能であった.また,波長532nmのグリーンレーザはシリコン表面での吸収が顕著であり,表面での溶融飛散物が多かった.一方,波長1064nmの近赤外では波長532nmと比較して溶融飛散物が少なく,穏やかな溶融状態が示唆された.さらにパルス繰り返し数が溶融飛散物の状況に影響を及ぼし,1MHz以上において数m/s以上の走査速度を用いることで,溶融飛散物を低減した良好な接合状態が得られた. アルゴンイオンビーム研磨により接合部断面形状を観察したところ,nsレーザでは主にシリコンとガラスの接合部はフラットな界面であったが,psレーザでは界面が複雑に入り組んだ接合部を確認することができた.この形状特有のアンカー効果により高い接合強度が期待できる可能性が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の研究実施計画であげていた「レーザ光照射条件と表面状態の検討」,および「レーザ光照射条件と溶融領域の検討」を実施し,nsレーザとpsレーザとの比較,およびシリコンに対して吸収特性の異なる2種類の波長についても溶融飛散物の発生状態を含む特性を理解できた.さらに,断面形状からは特異的なアンカー形状ともいえる接合部が得られることがわかり,高い接合強度が得られる可能性が示唆されるなど,おおむね順調に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
おおむね順調に進展していることから計画通り,平成26年度は「接合継ぎ手の機械強度評価」と「内部応力の検討」に関して検討を行い,超短パルスレーザを用いた信頼性の高い半導体材料とガラス基板の直接接合技術確立を目指す.さらに当初の研究計画には含まれていなかったが,プロセルメカニズムを議論するためにレーザ光照射部のインプロセス直接観察に関しても試みたいと考えている.
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