半導体基板に作製されたMEMSや各種センサを安定的に利用するためには,ガラス基板による気密封止が必要不可欠である.これには陽極接合が多用されているが,基板全体の加熱や高電圧を印加する必要があることから,デバイスへの負荷が大きい.そこで本研究では,超短パルスレーザを用いた直接接合法を検討し,半導体基板として広く用いられている単結晶シリコンとガラス材料を必要な箇所だけを直接接合する技術の開発を行う.本手法では単結晶シリコンとガラスの接触状態がプロセス特性に影響を及ぼすことら,安定的なプロセスを目指して,研究開発の最終年度である平成26年度は主にレーザ光の波長とパルス幅が機械強度に及ぼす影響,ならびにピコ秒パルスレーザで作製した接合継手の機械強度とレーザ光照射条件の関係性に関して検討を行った. レーザ光の波長532nmと1064nmで機械強度を比較検討したところ,波長1064nmの方が高い機械強度が得られた.これはシリコン表面での光エネルギーの吸収が顕著な532nmよりも,ある程度深さ方向に分散して光エネルギーが吸収される波長1064nmの方が材料の溶融溶接に適していたためと考えられる.また,ナノ秒パルスレーザと比較してピコ秒パルスレーザの方が高いせん断強度が得られた.これは,溶融飛散物が多いナノ秒パルスレーザでは流動する溶融物がシリコンとガラスの境界面を引き離す用に作用する.一方,溶接ビード周囲へ飛散物の少ないピコ秒パルスレーザではシリコンとガラスの境界面に大きなギャップを生じること無く接合できたため,高い切断強度が得られたと考えられる. ピコ秒パルスレーザを用いてレーザ光照射条件が接合継手の機械強度に及ぼす影響を検討したところ,そのせん断強度は,レーザ光の照射パルス数に影響を受け,かつ適切な時間間隔で適切なパルス数を照射することで,高いせん断強度が得られることが明かとなった.
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