研究課題/領域番号 |
24760110
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
村田 順二 立命館大学, 理工学部, 助教 (70531474)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 窒化ガリウム / 精密研磨 / 触媒 |
研究概要 |
窒化ガリウム(GaN)の微粒子・薬液フリー平坦化加工技術の開発として,平成24年度では,「(1)加工要素の開発ならびに加工条件の最適化による加工の大面積化」と「(2)加工後表面の原子スケール形状評価」に取り組んだ. (1)加工要素の開発ならびに加工条件の最適化による加工の大面積化:2インチGaN基板をウェハスケールで均一に平滑化を目指し加工条件を最適化した.加工圧力の基板面内分布および加工速度の面内分布等を評価し,それが均一となるよう加工条件および加工装置の基板保持機構の最適化を行った.加工後GaN基板表面の結果,2インチGaN基板の全面にわたって表面粗さを0.2 nm RMS程度まで平坦化することに成功した.計画では3インチや4インチ基板の加工も予定していたが,これらの大型基板が市販されるに至っておらず入手が困難であるため,現状では2インチ基板での評価を実施している. (2)加工後表面の原子スケール形状評価:本技術において平坦化加工を施したGaN表面を原子スケールにおける形状の評価を行った.その結果,加工後表面は0.1 nm RMS程度の原子レベルで平滑な表面であり,かつ原子ステップ・テラス構造で構成される結晶性の極めて高い表面であることがわかった.また,このステップ・テラス構造は2インチ基板の全面にわたって観察された.さらに,テラスの幅が広いテラスと狭いテラスが交互に配列されている特異構造が観察された.広幅テラスと狭幅テラスの幅比率を詳細に分析した結果,テラス幅がステップ間相互作用に依存することを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究項目(1)「加工要素の開発ならびに加工条件の最適化による加工の大面積化」においては,当初研究計画で目標に掲げていた2インチGaN基板をウェハスケールにおいて表面粗さ0.1 nm RMS(原子間力顕微鏡(AFM)により測定)に平坦化を達成した.一方,当初計画では3インチまたは4インチ基板の加工も予定していたが,業界における結晶基板の開発の遅れもあり,これらの大型基板が市販されるに至っておらず入手が困難であった.そのため,現状では2インチ基板での評価としており,大型基板の入手が可能になり次第評価を実施する予定である. 研究項目(2)「加工後表面の原子スケール形状評価」においては,AFMを利用した加工後GaN表面の形状評価を実施し,ステップ・テラス構造に関する詳細な分析を行った.本研究で開発した加工法によってのみ特異的に観察されるステップ・テラス構造について,結晶学的観点からその生成メカニズムなどを考察した.おおむね当初計画目標を達成したが,次年度以降STMや電子線回折を利用したさらなる詳細な分析を行う予定である.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度には,「表面の結晶性,発光特性,化学状態の評価」と「加工速度に関わる支配要因の抽出および最適化」,また「デバイス試作とその性能評価」を実施する.加工後表面の結晶性や発光特性などは,最終的なデバイス性能を支配する重要なパラメータである.まず電子線回折技術を利用し,表面の結晶性を定量的に評価する.また走査型マイクロPL装置やラマン分光を用い,局所的な発光特性の評価を行うほか,XPSを用い加工後表面の化学結合状態の評価を行う.さらに,全反射蛍光X線分析(TRXF)により,表面の白金汚染を評価すると共に,表面性能を劣化させずに洗浄を行う技術を開発する. 本加工法では,GaN表面の加工速度が0.01 um/hのオーダーであり,加工速度の向上が必要不可欠である.加工速度はGaN表面の酸化速度とその酸化膜除去速度により律速されていると考えられるが,それぞれの速度を支配する要因を抽出し最適化することにより加工速度を従来の加工法と同程度の0.1 um/hまで向上させる.そのために加工圧力や回転数,触媒材質,加工溶液などの各パラメータが加工速度に与える影響を評価し,最適な条件を 見出す. さらに本加工技術で平坦化した基板表面上に電子デバイスを作製し,評価を行う.まず構造の簡易なショットキーデバイスを作製し,そのI-V特性やC-V特性を評価する.また,外部研究機関と連携し,MOS構造の評価を行う他,ヘテロ構造の移動度等の評価する.最終的には,レーザーダイオードなどの発光デバイスを作製し,従来の技術では達成できなかった高輝度・長寿命などデバイス性能の発現を目指す.デバイス性能と加工後表面性能 の相関を評価し,加工装置や加工条件へのフィードバックを行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度には3インチや4インチのGaN基板の評価を予定していたが,業界の開発動向が遅れていることもあり,これらの基板を購入するに至らなかっため,次年度への繰越が発生した.次年度において,業界の開発が進みこれらの基板が入手可能になれば,これを購入し加工特性の評価を実施する.一方,次年度においても業界の開発が遅れるようであれば,2インチ基板での評価を継続して実施する.
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