研究課題/領域番号 |
24760110
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
村田 順二 立命館大学, 理工学部, 助教 (70531474)
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キーワード | 窒化ガリウム / 触媒 / 平坦化 / 発光特性 |
研究概要 |
次世代発光素子、パワーデバイス用材料として注目されている窒化ガリウムに対し、触媒作用を援用した新しい研磨技術を開発し、微粒子および薬液フリー平坦化加工を確立することを目的とし、平成25年度では主として「3.加工後表面の結晶性・発光特性・化学状態の評価」、「4.加工速度に関わる支配要因の抽出とその最適化」および「5.加工後表面のデバイス試作と電気特性評価」を実施した。下記に各研究開発項目に対する主要な研究実績を示す。 3.加工後表面の結晶性・発光特性・化学状態の評価:開発した触媒援用研磨技術によって、平坦化加工を施した窒化ガリウムの表面を、フォトルミネッセンスによって評価した。研磨前の表面には多数の欠陥が存在していたが、開発技術によって研磨した表面は欠陥が除去されたため、バンド端発光強度が約18倍に増強されることが確認された。また、反射高速電子回折による結晶性の評価を行った結果、加工によって窒化ガリウム表面の結晶性が改善し、最表面まで単結晶を維持した表面を達成した。さらに、加工後表面は自然酸化膜やコンタミのないクリーンな表面であることが明らかとなった。 4.加工速度に関わる支配要因の抽出とその最適化:本加工技術による窒化ガリウム表面の加工速度には表面の酸化速度が律速していることが明らかとなった。そこで、表面の酸化速度の向上を目的とし、研磨加工中に窒化ガリウム表面に紫外線照射および電圧印加を行うことを提案した。これによって、平坦な表面を得るための研磨時間をおよそ1/30に低減することに成功した。 5.加工後表面のデバイス試作と電気特性評価:加工後表面に簡単なショットキー構造を作製し、その性能評価を行った。開発した加工技術により従来加工技術よりも高い電流-電圧特性を示すことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各研究開発項目に対する達成度の評価を以下に示す。 3.加工後表面の結晶性・発光特性・化学状態の評価:本研究開発項目においては、フォトルミネッセンスや反射高速電子回折、全反射蛍光X線分析などによって表面状態を評価し、本技術によって従来技術よりも高い結晶性や発光特性が得られることが明らかとなっている。また、触媒由来の金属汚染に関しても王水洗浄によって除去できることを明らかとしており、当初計画通りに研究が進捗したと評価できる。 4.加工速度に関わる支配要因の抽出とその最適化:本研究開発項目においては、加工中の窒化ガリウム表面への紫外線照射ならびに電圧印加によって大幅な加工時間の低減を達成し、当初計画通りに研究が進捗したと評価できる。 5.加工後表面上のデバイス性能評価:本研究開発項目においては、簡単なショットキーデバイスを作成して、表面電気特性の評価を行い、従来技術よりも優れた電気特性が得られることが明らかとなった。一方で、当初予定では、外部評価機関との連携によりMOS構造やLED等の試作・評価を行う予定であったが、加工面の均一性などの課題がクリアできておらず、評価に至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、当初計画を概ね予定通り進捗しているが、課題として加工のウェハ面内均一性の向上と、大口径ウェハへの対応が挙げられる。また、より詳細なデバイス性能の評価も望まれる。上記の課題を解決するために、加工装置および触媒の形状等を再検討し、ウェハの平坦性や厚みムラなども評価する必要がある。これによって、均一性が向上すればデバイスの試作も実現できると考えられるため、外部機関と連携してデバイス性能の評価を実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の研究計画では大口径GaN基板の平坦化加工を行い、加工特性の均一性を評価する予定であったが、3インチや4インチのGaN基板が市販されるに至っておらず、入手困難な状況が発生した。そのため、計画を変更し2インチ基板での評価を行うこととしたため、未使用額が発生した。 次年度以降も大口径基板が上市されればその評価を行うが、引き続き入手困難な状況であれば2インチ基板での評価を実施する。デバイス特性の評価も2インチ基板で行うこととし、未使用額は基板購入費とデバイス特性の評価費として使用する。 また、研究代表者の所属機関が変更となったため、本研究に関わる実験装置およびその周辺機器を整備するための物品購入費として使用する。
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