本研究では,アダプティブな設計開発プロジェクト計画手法の基盤となる設計プロセスオプション理論を先行研究における知見と具体的な事例の分析に基づいて構築するとともに,プロジェクト計画問題を多目的最適化問題として定式化してその解を効率的に探索する手法を確立することを目的とする.平成25年度では,平成24年度の成果に基づいて,設計プロセスオプション理論とそれを踏まえた最適化戦略の実質化を行った.具体的には,設計プロジェクトにおけるタスクのオプションを考慮してリスクマネジメントを行うことを想定し,プロジェクト計画案の評価指標として,プロジェクト目標が達成された場合に期待できる製品性能の高さと,知識・経験不足による目標達成失敗のリスクの2つの視点に着目し,その下での最適な解を得るためのプロジェクト計画手法を提案した.研究代表者らのグループが提案しているタスクオプションを考慮したリスク評価モデルと,二段階多目的最適化法に基づいて,設計プロジェクトの最適計画を実現するための手法を提案した.実際の計算にあたっては,多目的最適化に適した遺伝的アルゴリズムであるNCGA を用いた.平成24 年度に引き続き,手法の構築と実装,および学生フォーミュラプロジェクトの計画問題を通じた検証とフィードバックを,研究代表者の主導の下で大学院生2名と共同で行った.適宜,研究協力者と密接に情報交換を行った.その結果,本研究で提案した手法により,優れたプロジェクト計画案を,2つの視点のもとでのパレート解として導出できることが確認できた.
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