研究課題/領域番号 |
24760123
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
茅原 崇徳 首都大学東京, システムデザイン学部, 助教 (00582967)
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キーワード | 人間工学 / 身体負担 / 関節モーメント / 生体力学解析 |
研究概要 |
本研究は,身体負担を考慮した人間工学的設計に応用可能な負担感評価モデルの構築を目的としており,人体にはたらく力のつり合いから算出される関節モーメントを身体負担の評価指標としている.関節モーメントは身体に複数存在する関節自由度ごとに算出されるが,作業条件の違いにより複数の関節モーメント間にトレードオフの関係が発生する場合,最適な作業条件の特定が困難になる.したがって,関節モーメントを身体負担の軽減を目的とした設計の指針とするためには,複数の関節モーメントを単一の指標に統合することが必要である. 本年度は,前年度で確立した単一の関節モーメントの負担感評価法を拡張し,複数の関節モーメントを総合的に評価する手法の検討を行った.具体的には,各関節モーメントを説明変数とした総合的身体負担評価関数の近似モデルを同定することを試みた.はじめに,主に上肢の負担評価に用いられるRULAと呼ばれる手法の姿勢と把持重量の分類に基づいて生体力学解析を実施し,各関節自由度の関節モーメントとRULAの総合評価指標を取得した.各関節モーメントと総合評価指標の関係を調査した結果,各関節自由度の関節モーメントが比較的低い場合は総合負担が関節モーメントの平均値に影響を受け,各関節モーメントが比較的高い場合は総合負担が関節モーメントの最大値に影響を受けることを確認した.この結果を踏まえ,ロジスティック関数を用いて,関節モーメントの最大値の増加に伴い総合負担の決定要因が平均値から最大値に遷移する近似モデルを提案した.提案した近似モデルは,関節モーメントの平均値や最大値を総合評価指標とする場合と比べて,より精度良く総合的身体負担を予測できることを確認した.さらに,負担評価の対象を上肢から全身へと拡張した総合的身体負担評価関数の定式化についても検討を行い,総合的負担感の予測精度が従来手法よりも高いことを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
複数の関節モーメントと総合的身体負担との関係について調査し,関節モーメントの平均値と最大値が関係していることを明らかにした.また,関節モーメントの大きさにより総合的身体負担を支配する要因が変化することを定量的に評価し,支配要因の変化を加味した近似モデルを提案して総合的身体負担評価関数を定式化した.さらに,従来手法と比較して提案した評価関数の予測精度が高いことを確認した.上記の成果の一部は平成25年度に開催された講演会で発表済みであり,投稿論文の提出も準備中である.このように,当初の計画をおおむね達成できている.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では,平成25年度までに定式化した関節モーメントに基づく総合的身体負担評価関数を実際の作業環境や製品の設計問題に適用して有効性を検討する.一例として,最も基礎的な作業環境の設計問題である作業台高さの最適設計を行う予定である.得られた最適解と作業台高さの推奨値を比較し,本研究で提案する評価関数の有効性を検討する.さらに,従来手法では評価が困難な鉛直下向き以外に外力が作用する作業環境の設計問題にも定式化した評価関数を適用し,定式化した評価関数の汎用性と限界について検討を行う.
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