四面体メッシュ,六面体メッシュを初めとするボリュームメッシュ生成は有限要素解析(以下FEMと略す)において非常に重要な役割を持っている.なぜならボリュームメッシュの質はFEMの結果の精度に大きく影響するからである.特に対象となる物体に適合した境界を持つ境界適合型六面体メッシュは境界適合型の四面体メッシュよりも精度の点で非常に優位とされ重要視されていた. この問題に対し,ボリュームメッシュの質を向上させるボリューム細分割という手法を開発したが,ボリューム細分割は初期メッシュの質で結果のメッシュの質が左右される.そのため,初期メッシュを生成する手法の開発を行った.既存の六面体メッシュ生成法のほとんどは,生成するメッシュの内部頂点位置を定めるのにポアソン方程式を解いている.表面メッシュ生成ではポアソン方程式による頂点の位置決めがスタンダードであり,それをボリュームメッシュ生成に拡張した自然な結果だと思われるが,2次元と3次元ではその性能は大きく異なる.表面メッシュ生成においてもポアソン方程式は時折折りたたまれたメッシュ(ある地点のメッシュが2重,3重になる現象)を発生させる.同様にボリュームメッシュ生成でもポアソン方程式を解けば空間的に折りたたまれたボリュームメッシュが発生するのだが,その発生頻度は2次元とは比べ物にならないほど多い.この重複現象が六面体メッシュ生成を困難ならしめる元凶であり,ポアソン方程式を解く限りこの問題から逃れられない.よってポアソン方程式ではなく3次元等角写像を利用してボリュームメッシュの内部頂点位置決めを行い,既存の手法よりも良好な初期メッシュを作成することに成功した.
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