研究課題/領域番号 |
24760125
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研究機関 | 新居浜工業高等専門学校 |
研究代表者 |
越智 真治 新居浜工業高等専門学校, 機械工学科, 准教授 (20390388)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 機械要素 / 竹 / 歯車 |
研究概要 |
平成24年度は,より精度の良い竹歯車を製作することを目標とした.2つの方法で歯車を成形し,その精度評価を行った.目標とする歯車は,実際に使用されているポリアセタール製の歯車である.2つの歯車作製方法は,歯車成形用の金型を用いて成形する方法と円柱状の成形体を作製してそれをホブ盤を用いて切削する二つの方法である.その際,成形温度を150℃~220℃とし,精度に及ぼす成形条件の影響を調べた.これらの方法で作製した歯車を歯車かみあい試験機を用いて歯溝の振れ,かみ合い誤差などの精度を評価し,JISの歯車精度比較表にて等級を求めると共に現行のプラスチック歯車と比較した. その結果,200℃で予備成形体を作製し,ホブ盤を用いて加工した歯車の等級は9級となり,目標とするポリアセタール製の歯車と同等の精度の歯車を作製することができた.一方,歯車成形用の金型を用いて作製した歯車は,JISの精度等級に当てはまらなかった.これは,表面観察から,歯の表面にボイドが見られたこと.この金型はプラスチック製歯車成形用に作製された金型であるため,プラスチックの収縮率を考慮して作製されている.今回竹を用いて歯車を作製し,寸法を測定した結果,プラスチックのように収縮せず,逆に膨張する傾向がみられた.この結果が,精度が良くない歯車ができた原因だと考えられる.この結果より,金型を用いて竹歯車を作製するためには,膨張率を考慮した金型設計が必要になることがわかった. 今年度の結果より,成形温度200℃,成形圧力130MPaの成形条件で竹粉を圧縮し,円柱状の予備成形体を作製して,ホブ盤で加工する方法が最も精度の良い竹歯車を作製できることを見いだした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度には,交付申請書の研究目的に記した①の竹歯車の成形と②の精度評価を行った.①の歯車の成形には,歯車成形用の金型を用いた方法と一度円柱状の予備成形体を作製し,ホブ盤で加工する方法で実施した.その結果,2つの方法により,竹粉末のみを原材料とし,成形温度200℃,成形圧力130MPaの条件で成形することにより,モジュール1mm,歯数40枚,歯幅10mmのインボリュート歯形の竹歯車を作製することができた.その際,精度に及ぼす成形温度の影響を調査した結果,歯車成形用の金型を用いた場合,成形温度180℃までは,歯先まで竹粉が充填されず,220℃では,表面にボイドが多数みられた.ホブ盤で加工した場合は,180℃までは,加工した際,歯面の欠損がみられ,共に200℃で加工した歯車が最も良い形状を示した. ②の歯車の精度評価では,歯車かみ合い試験機を用いて,全かみあい誤差,1ピッチかみあい誤差,かみあい偏心を測定し,JISの精度評価表により等級を求めた.その結果,金型で作製した歯車はJISの精度等級に当てはまらなかった.金型で作製した歯車は,成形後,歯が膨張する傾向が見られた.一方,ホブ盤で加工した歯車は9級の精度を有し,目標とするポリアセタール製歯車と同等の精度を示した. 現在まで,目標としていた①歯車の成形,②歯車の精度評価まで達成している.今後③歯車の動的性能評価が始められる前まできており,おおむね順調に進展していると評価した.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,交付申請書に記した③歯車の動的性能評価を実施する.これまでに金型による歯車の作製と,ホブ盤による歯車の製作を行い,歯車の精度に及ぼす成形条件の影響を明らかにしてきた.これらの歯車を用いて動的な性能試験を行い,成形条件・歯車精度と運転時の騒音・温度・摩耗量との関係を明らかにするとともに,ポリアセタール製の歯車との比較を行う.その際,より低騒音な歯車を作製するため,歯車の歯面の組織を制御して,騒音に及ぼす歯面の組織の影響を明らかにする.これは,プラスチック歯車の場合,成形時に歯面の結晶部と非結晶部ができる.この結晶部の厚さが運転時の騒音に影響しているという研究例がある.本実験における竹歯車においても成形時の温度が変わることによって内部組織が変化することから,成形時間,成形温度,成形圧力から結晶部(本研究では,竹粉の溶融部)の厚さを制御して運転時の騒音が変わってくるのではないかと考えている. 試験は,歯車動力試験機を用いて,モーターで歯車の回転数を変え(0~1500rpm),ブレーキで従動歯車から駆動歯車に負荷をかけ,トルクメータでその負荷(0~2Nm)を調節し,10000000回まで回転させて,竹歯車の耐久性を明らかにするとともに,騒音,歯面温度,摩耗量を測定し,様々な回転数,負荷の条件下における歯車の性能を評価し,ポリアセタール製歯車の性能と比較して,実用化への模索を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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