鉄系材料は、代表的な金属材料の一つであり、様々な工業製品や建築資材などに使用されており、鉄系材料の機械部品の潤滑としては、主に、潤滑油やグリースが用いられ、潤滑油やグリースの開発・潤滑機構の解明などの様々な研究が行われている。これらの潤滑油やグリースを使用できない機械部品の場合には、潤滑性皮膜などのコーティングが用いられている。しかし、これらのコーティングには高機能性に加えて、安価であることが重要となる。そこで、適切な性能を付与した皮膜を低コストなプロセスで付与することができれば、その波及効果は大きい。本研究では、鉄系表面において有機分子の自己組織化膜を潤滑膜として利用する高機能コーティング技術の開発を目的とする。 平成24年度に得られた成果より、分子・基板間にホスホン酸を用いた分子が鉄系表面で高密度な膜を形成し、耐熱性の向上・摩擦低減化に有効である結果が得られた。平成25年度は、平成24年度に得られた成果を基に分子種の構造の検討を行い、純水中での耐食性と分子構造の関係について調べた。その結果、分子鎖の短いものに関しては、純水中での浸漬により錆が発生し分子修飾の効果が得られないことがわかった。一方、分子鎖が長い分子に関しては、純水の浸漬による錆の発生が抑制された。さらに、X線光電子分光装置(XPS)で表面分析を行った結果、フッ素を含む分子を用いた方が、表面修飾分子の脱離が抑制できることがわかった。以上から、分子種の選定により、分子修飾による耐食性の向上が可能であることが示唆された。
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