研究課題/領域番号 |
24760129
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
日出間 るり 神戸大学, 学内共同利用施設等, 助教 (20598172)
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キーワード | 非ニュートン流体 / 高分子 / 乱流抑制 / 伸長粘度 |
研究概要 |
本研究は高分子による乱流抑制には高分子の伸長粘度が重要であると考え,それを実験的に証明するのが目的である.二次元格子乱流により乱流を可視化し画像解析する手法,薄膜干渉流動画像法(FIFI)を用いて乱流への高分子添加効果を調べる.さらに溶液の伸長粘度を測定する装置,微小伸長粘度測定器(Micro-EVA)を開発する.25年度は以下の項目を達成した. 1.FIFIの装置で,二次元格子乱流にかかる伸長速度を変化させ,乱流中の高分子にかかる伸長速度を変化させた際の乱流抑制効果を調べた.高分子には屈曲性のポリエチレンオキシド・剛直なヒドロキシプロピルセルロースを用いた.伸長速度を増加させると,高分子が低濃度の領域から乱流に変化が現れた.これは伸長速度が大きいと高分子の伸長粘度が増加することに由来すると考えられる.高分子溶液の乱流抑制効果は流動摩擦測定によっても検討した.この結果,FIFIの解析結果は流動摩擦抵抗測定の結果とも対応していることが解った.さらに二次元乱流での乱流抑制効果の異方性を画像のフーリエ変換,ウェーブレット変換により調べた.このことから,乱流が層流化する際,二次元乱流で見られていたオリジナルの渦が消失する一方,一旦大きなスケールの周期構造が生成される流動機構を明らかにした. 2.高分子溶液の伸長粘度を実測できる装置Micro-EVAの開発を進めた.内部を可視化しながら流動中の圧力損失を測定できる急縮小流路を製作した.内部の流動状態から急縮小部分の流速の変化を詳しく調べ伸長速度を求めた.伸長速度および圧力損失による測定から伸長粘度を測定した.グリセリン,高分子,界面活性剤を含む溶液を用い,溶液のニュートン・非ニュートン性による測定の確からしさを検証した.この結果溶液が非ニュートン流体であっても,流動状態は変化せず,ニュートン流体と同様に伸長粘度を測定できることが解った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
25年度の計画にしたことは,全体的に良好に進んでいる.FIFIの実験に関しては,格子間隔を変え,二次元格子乱流にかけられる伸長歪み速度の範囲を広げた.流速のコントロールに関しても,装置に改良を行っている段階である.画像解析については,ウェーブレット変換のデータを詳しく解析できるようにした.Micro-EVAの開発では,界面活性剤溶液について,これまでに他の方法で測定された結果と比較すると,ある濃度で近い値を示したためMicro-EVAによる測定の精度が上がってきたと考えられる. また,本研究から派生した研究として,マイクロ流路中の粘弾性流体の挙動(弾性乱流)を観測する実験に着手した.マイクロ流路中の弾性乱流は,溶液の伸長粘度にも影響を受け,乱流抑制や伸長粘度測定に深く関わっているため,相互の実験を対応づけながら進めていくことが重要だと考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
FIFIとMicro-EVAを用いて,測定の対象を広げ,系統的に観測データを得る. 1. FIFI装置について流速をコントロールする精度を上げる.また,格子付近で渦が生成する様子をPIV測定により詳しく調べ,独自に開発した画像解析システムから得られる物理量との検証が行えるように装置を改良する.画像解析では,ウェーブレット変換による解析をさらに進め,二次元乱流中の渦の形の変化について詳細に検討する. 2. Micro-EVAで様々な溶液を測定することにより,測定により得られる伸長粘度の確からしさを検証し,装置を改良する.そして,低粘度高分子溶液の伸長粘度測定を可能にする. 3. FIFIで測定できる高分子の乱流抑制と,Micro-EVAで測定できる高分子溶液の伸長粘度を対応付け,乱流抑制効果への伸長粘度の影響を実験的に対応づける.さらに,マイクロ流路中の弾性乱流挙動に関する研究も進め,この知見を乱流抑制効果の実験的解明に役立てる.
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