研究課題/領域番号 |
24760131
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
舩谷 俊平 山梨大学, 医学工学総合研究部, 助教 (50607588)
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キーワード | 可視化 / LIF / 温度場計測 / 速度場計測 / 3次元計測 / PIV |
研究概要 |
平成25年度は、1、温度場、速度場の3次元同時計測を実現する2、電子基盤用加熱炉を想定した温度計測範囲(0℃-250℃)で計測できる、の2点を目標に研究を行った。 1、温度場、速度場の3次元同時計測について 平成24年度の研究成果により、レーザービームのスキャンによる気流温度場の可視化手法が確立されていることから、平成25年度は、ビームスキャンによる気流速度場の3次元計測法の開発を行った。その結果、2種類のビームをW型に3次元スキャンし、得られた可視化画像を3次元再構成することによる3次元PIV法を開発し、これを特許出願のうえ、10the International Syumposium on PIVにおいて発表し、Outstanding Poster Prizeを受賞した。また、この成果をJournal of Flow Visualization and Image Processing誌に投稿し、採択された。 2、温度計測範囲の拡張について 平成24年度の研究成果により、ローダミンB、ローダミン110の2種蛍光染料を用いた気流温度場計測を行うことができたが、ローダミン110の蛍光強度が、高温雰囲中で経時劣化することが、温度計測範囲の拡張に対して解決すべき課題として残っていた。そこで、経時劣化しにくいローダミンBのみで温度場計測を行う手法を開発した。ローダミンBの蛍光強度特性の温度変化を波長域毎に詳細に計測した結果、光源を紫色レーザー(波長405nm)に変えることで、ローダミンBの蛍光のみで温度場計測ができることが分かった。その結果、目標温度250℃での温度場計測が可能である見込みを得た。この成果は平成26年6月のISFV2014国際会議において報告し、英文誌に投稿する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)温度場、速度場の3次元同時計測について 気流の3次元速度場計測法の開発を行った。その結果、2種類のビームをW型に3次元スキャンし、得られた可視化画像を3次元再構成することによる3次元PIV法を開発することができた。その結果、当初予定していたライトシートスキャンによる3次元速度計測で懸念された、速度計測精度の低下を防ぐことができた。計測精度を評価した結果、従来のPIV法と同等の計測精度(5%FS)を実現できることが分かった。 (2)温度計測範囲の拡張について 研究目的に設定した本年度の目標(温度計測範囲)に対し、特に、温度計測範囲の拡張において問題となる、ローダミン110蛍光染料の蛍光強度劣化の対策について検討した。その結果、このローダミン110を用いず、蛍光強度劣化の小さいローダミンBのみでの、単染料2色LIF温度計測法の開発を行うことができた。ただし、高温用の温度計測精度評価装置の完成が間に合わず、目標温度250℃での温度計測精度実験が未実施である。また、蛍光染料1種類での温度分布計測が可能になった結果、従来法(2種染料での2色LIF法)での計測誤差要因であった、長時間計測における計測精度低下の問題が解決された。従来法では、蛍光強度の劣化度合いが染料毎に違うことが誤差要因であったが、蛍光染料が1種類(ローダミンB)のみになったことで、この誤差要因が無くなり、計測精度が向上した。計測精度の詳細については平成26年度中に評価し、英文誌に投稿する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度(平成26年度)の目標は、電子基盤用加熱炉の熱交換器周りの温度・速度分布計測を行うことができる計測システムを提供することとしている。そこで、可視化実験用のガラス窓付き加熱炉を製作し、炉内の温度・速度分布計測を行う。 当初の研究実施計画では、計測領域内に蛍光液滴を一様に噴霧するため、可視化実験専用の煙発生器(ミスト粒径1ミクロン以下)を導入することとしていた。これに対し、平成25年度の研究成果により、ライトシートスキャンによる速度計測精度低下を防ぐことができたため、ミスト粒径3ミクロン以下の家庭用超音波噴霧器で代用できる見通しが立てられた。こうした計測システムの低コスト化により、本研究成果の産業界への導入が更に促進する効果が期待できる。また、狭隘な炉内で可視化実験を行うにあたり、ガラス窓への噴霧液滴の付着の影響が懸念される。この影響を低下させるため、可視化用ダイオードレーザーを増強し、超高感度カメラを導入するとともに、ビームスキャニング光学系の改良により、可視化領域へのビーム光量の増加を図る。なお、ダイオードレーザーは、平成25年度の研究成果において有効であることが示された405nm紫色ダイオードレーザーとする。 また、平成25年度に未実施であった、高温度域(250℃前後)での温度計測精度評価を行う。その際、高温度域での噴霧液滴の揮発の影響を評価し、必要に応じてより高沸点のグリコール系溶液に変更し、併せて計測精度評価を行う。 上記の改良により得られた温度・速度分布の計測結果を科研費実績報告書にまとめ、その内容を英文誌に投稿する予定である。
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