研究課題/領域番号 |
24760135
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
村川 英樹 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40467668)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 超音波 / ドップラ法 / 速度分布計測 / UVP / 流体計測 |
研究概要 |
超音波ドップラ法は反射体によって生じるエコー信号を解析することで、測定線上の一次元瞬時速度分布が計測可能な手法である。本手法を混相流に適用する場合、得られた速度分布を各相の速度データに分離するために界面の同定が必要とされる。気液二相流計測では界面の同定には数ミリ秒オーダの時間分解能が必要である。そこで本研究では、従来数十ミリ秒オーダであったドップラ法の時間分解能を向上させるためのアルゴリズムの検討を行った。ドップラ法では、超音波パルスの送受信によって得られた反射信号を直交検波し、周波数解析によってドップラ周波数を得る。この際、周波数解析には一般的にFFTや瞬時周波数法(自己相関法)が用いられている。そこで本研究では、高周波数成分、すなわち速度が速い領域は高時間分解能、低流速では低時間分解能となる特性を有するウェーブレット解析によるアルゴリズムを導入し、超音波パルサレシーバ、高速デジタイザおよびPCを用いた計測システムを構築した。システムの有効性を確認するため、幅50mm、高さ25mm、長さ3000mmのアクリル製水平矩形流路において単相流速度分布計測を行った。レーザドップラ流速計(LDV)によって得た速度データにノイズ成分を付加し、復調したものを超音波反射波の疑似信号として扱い、SN比および超音波の繰り返し回数を変化させて、アルゴリズムの違いに伴う速度算出結果への影響を評価した。さらに実際の速度分布計測において評価するため、超音波の反射波形を連続的に取得・保存した。同一の計測波形を用いて、異なる超音波繰り返し数やアルゴリズムでの速度算出を行い、測定精度について検証し、ウェーブレット解析の有効な条件について検討した。また二相流での計測結果を比較するための準備として、汎用数値解析ソフトを導入し、単相流における基礎的な流動解析を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度では、パルサレシーバ、高速デジタイザおよびPCを用いたシステムにおいて、従来のアルゴリズムに加え、新たにウェーブレット解析を導入し、その効果を検証することを研究の主たる目的としていた。実際にシステムの構築を行い、単相流におけるLDVとの比較および実験によって精度評価を実施しており、当初予定していた研究内容がほぼ達成され、予定通りの結果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
超音波ドップラ法の気液二相流計測への適用を行うため、二相流において超音波反射波形を連続的に取得する。データ取得の最低周期は、超音波の繰り返し周波数と同等とする。得られた波形をFFTおよびウェーブレット解析による周波数解析を実施することにより、各計測位置におけるスペクトログラムを取得する。スペクトログラムでは、スペクトルの時間変化を確認可能である。気泡の通過に伴う液相乱流の変化、および気液界面で生じる僅かな速度変動をスペクトログラムから検知することで、気液界面位置の同定が可能であると考えられる。そこでスペクトログラムの解析による界面位置の同定のためのアルゴリズム構築を行う。これにより、気泡通過時の気泡周囲の速度データを高精度に取得可能とする。さらに超音波のエコー信号強度は反射体の大きさや界面形状によって変化する。そこで反射波形を解析することで気泡数密度、局所ボイド率などの気泡パラメータの取得を検討する。構築したシステムの有効性を示すため、水平ダクト内気液二相流を対象とし、気泡通過に伴う壁面のせん断応力変化、気泡周りの液相速度分布、壁面における液膜厚さおよび気泡形状を計測する。液相速度分布計測には、気液界面の同定が必要であり、システムに組み込んだアルゴリズムを用いて計測を行う。現有の高速度カメラとの同期計測により、界面位置検出の精度検証を行う。これにより、気泡通過に伴う壁面せん断応力変化とそのメカニズムについて実験的解明を行い、流体解析ソフトを用いた数値解析結果との比較検討することにより計測精度および適用条件の検証を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
二相流計測を行うため、既存流路の改造が一部必要である。それに伴う消耗品費、計測システム制御用のソフトウェアの購入費、研究成果発表および資料収集のための旅費として、研究費を使用する予定である。
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