超音波パルスドップラ法は、複数の超音波パルスを連続的に送受信し、エコー信号を解析することで速度を算出するため、時間分解能は数十ミリ秒オーダである。本手法を気液二相流に適用するため、気液界面の同定のための時間分解能の向上が必要であり、パルスドップラ法の時間分解能を向上させる手法について検討した。パルスドップラ法では、超音波パルスの送受信によって得られた反射信号を直交検波し、周波数解析によってドップラ周波数を得る。この際、周波数解析には一般的にFFTや自己相関法が用いられているが、新たにウェーブレット解析によるアルゴリズムを導入した。構築した計測システムを用い、連続的に反射体からの超音波反射信号を記録し、ノイズ条件下における各アルゴリズム、および超音波の繰り返し回数による速度分布計測への影響について、解析的・実験的に評価した。その結果、ノイズの多い条件では周波数解析手法にFFTやウェーブレット解析が有利であること、FFTや自己相関法では速度を計測するための最適な超音波の繰り返し数が存在し、ノイズの増加に伴いその数が増加することが分かった。ウェーブレット解析では最適な超音波の繰り返し数について決定する必要が無く、SN比が計測位置によって変化する超音波計測では有利であった。最終年度には、FFT、ウェーブレット解析よりスペクトログラムを算出することで、高時間分解能で粒子や気泡の通過が確認でき、高速度カメラとの同期計測を実施することで二相流における速度分布計測および気液分離への応用が可能であることを示した。更に、異なる間隔で超音波パルスを送受信することで計測可能速度を拡大する手法を新たに導入し、速度分布計測における有効性について検討した。これにより、気液上昇流など、気相速度が液相速度に比べて速く、従来では困難であった条件で計測可能であることを示した。
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