研究課題/領域番号 |
24760137
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
住 隆博 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30358668)
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キーワード | 混相流 / 微粒化 / 数値流体力学 |
研究概要 |
本研究は,直噴ディーゼル機関における未燃炭化水素低減を目的としたVCO (Valve Covered Orifice) ノズルについて,針弁の偏心によるノズル内部の流動予測と噴孔出口下流の噴霧微粒化過程の相関に焦点を当てる.研究計画に示したとおり,技術的,時間的,計算資源的な配慮から,ノズル内部の流動予測と噴孔出口下流の噴霧微粒化予測を切り分けて研究を進めた. まず,ノズル内部の流動予測について,汎用熱流体解析ソフトウェア STAR-CCM+ を用いて解析を行った.前年度までに,水を作動流体とする可視化実験用のアクリル製10倍拡大ノズル模型と等価なフルスケールモデルについての計算方法を確立したため,計算結果を可視化実験結果により近づけるべく,ノズルの細かな形状条件や流入圧力等の境界条件,および計算格子等のパラメータチューニングを行った.結果として,噴孔内流動に大きく影響を与える因子の洗い出し(例えば,噴孔入口部のエッジ曲率半径),ならびに可視化実験結果に対する予測精度の向上が可能となった.本内容については,日本機械学会論文集に投稿(平成25年9月)ののち掲載(平成26年4月)され,さらに日本機械学会中四国支部講演会(平成26年3月)にて発表を行った. 次に,噴孔出口下流の噴霧微粒化過程の予測のために,高次精度混相流数値解析コードの開発を前年度に引き続き行った.これに際して,圧縮流に対するロバストな高次精度解法を新規に開発したため,数値流体力学シンポジウム(平成25年12月)にて発表を行った.前年度までに,VOF (Volume of Fluid) 法をベースとした拡散界面モデルによる圧縮性混相流数値解析コードの作成に着手していたが,各種ベンチマークテストを通して,解法のロバスト性の向上ならびに界面の急峻化法の導入など,数値解析コードのチューニングと洗練化を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
まず,汎用熱流体解析ソフトウェアによるノズル内部の流動予測については,ノズルの細かな形状条件や流入圧力等の境界条件,および計算格子等のパラメータチューニングを行ったことで,従来よりも可視化実験結果に対する予測精度が向上した.特に,針弁偏心時における噴孔出口からの空気流入の条件が,噴孔入口部のスワール数により簡明に整理できるという結論を得た.(流入圧力等を変更しても空気流入はスワール数が約0.56以上となる針弁偏心量において普遍的に観測される.)このように,噴孔内部流動については定性的ながらも可視化実験結果を概ね再現できたと考えており,流動メカニズムに対する考察もかなり深まったことから,本解析については当該年度をもって終了し,次年度は噴孔出口下流の噴霧微粒化過程の予測に集中する. 次に,噴孔出口下流の噴霧微粒化過程の予測について,前年度までにVOF法をベースとした拡散界面モデルによる圧縮性混相流数値解析コードの作成に着手していたが,解法のロバスト性に問題があったため,定式化の見直しとともに新規提案の方法論を組み込んで解法の性能向上を図った.さらに,拡散界面モデルで問題となる界面の鈍化を防ぐために,二種類の急峻化法を組み込んで解法の洗練化を行った. 当初のスケジュールでは,作動流体(ここでは水)の表面張力および粘性を考慮して,噴孔出口下流の噴霧微粒化過程の二次元計算を当該年度中に実施する予定であったが,圧縮性混相流に対する高次精度解法および界面急峻化法の研究は,世界的に見ても先端的なトピックであり,前例が無いかもしくは極めて少ないために,開発に予想以上の時間を要した.しかしながら,開発完了に目途をつけることができたうえ,代わりに多くの学術的・技術的知見を得ることができた.
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今後の研究の推進方策 |
まず,ノズル内部の流動予測については,可視化実験結果を定性的ながらもある程度再現できたため,日本機械学会論文集への掲載(平成26年4月)および日本機械学会中四国支部講演会での発表(平成26年3月)をもってひとつの区切りとする. 次に,噴孔出口下流の噴霧微粒化過程の予測については,高次精度混相流数値解析コードのベース部分の開発に目途がついたことから,作動流体(ここでは水)の粘性と表面張力を加え,早期に二次元計算を実施する.(三次元計算については数値解析コードの並列化の必要性と計算機リソースの確保の問題から,二次元計算の進展をもって判断する.)なお,予備的に汎用熱流体解析ソフトウェアを用いて噴霧微粒化過程の計算が可能であるかどうかを同時に試す予定である.また,高次精度混相流数値解析コードの開発に際して得られた知見(圧縮性混相流への高次精度解法および界面急峻化法の適用)については,次年度の混相流シンポジウム(平成26年7月)および数値流体力学シンポジウム(平成26年12月)にて発表を予定している.その他,ある程度内容がまとまり次第,査読付き海外専門誌への投稿(1件)を目指す.
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次年度の研究費の使用計画 |
第一に,機械学会論文の投稿費用として100千円を確保していた(投稿は平成25年9月)が,掲載が次年度初頭(平成26年4月)となり支払が遅れたため. 第二に,新規提案の数値解法についての論文投稿費用250千円(投稿先としてJournal of Computational Physics を予定)を確保していたが,内容を深く吟味した結果,投稿が次年度初頭(平成26年4月)にずれ込んだため. 上記理由に示した通り,当該年度の未使用額については次年度に論文投稿費用(2件)として使用する予定である.さらに,次年度予算は,査読付き海外専門誌投稿費用(1件),ソフトウェア保守費用,および旅費として使用する予定である.なお,交付申請書に記載したメッシュジェネレータ(800千円)については,当座の解析では複雑形状を扱わないと判断したので見送ることとし,論文の投稿費用等に充てることにする.(申請当初は,昨今の査読付き海外専門誌の投稿費用が高額であることを想定していなかった.) 機械学会論文投稿費用100千円(当該年度未使用分),Journal of Computational Physics 論文投稿費用250千円(当該年度未使用分),査読付き海外専門誌投稿費用(投稿先未定)250千円,ソフトウェア保守費用150千円,旅費250千円
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