研究課題/領域番号 |
24760138
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
重光 亨 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 准教授 (00432766)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ピコ水力 / 小型ハイドロタービン / 二重反転形羽根車 / 低ソリディティ / 繊維状異物 |
研究概要 |
再生可能エネルギーの中で小水力は,新エネルギー分野として位置づけられており,ピコ水力などの小型ハイドロタービンが注目されている.しかし,小型ハイドロタービンは大型の水車と比較し効率が低く,農業用水や小規模な河川などで利用されるため,異物を含む条件下における水車内の流動現象の解明やその流れ場に適合した高性能かつ異物通過性の良好な小型ハイドロタービンの確立が求められている。そこで、本研究では小型ハイドロタービンの高性能化と安定運転の両立を目的に、小型ハイドロタービンに高性能化が期待できる二重反転形羽根車を採用した。 1.小型ハイドロタービンへ二重反転形羽根車を活用した際の性能上の有効性の検証 環境負荷の小さな直径100mm程度の小型ハイドロタービンにおいては,50%を超える効率は得られていないため,二重反転形の効果を活用し水車効率60%を目標と設定した.ケーシング直径60mmと非常にコンパクトな小型ハイドロタービン用実験装置を設計・製作し,その性能特性を調査した.本供試小型ハイドロタービンの最高効率は59%であり、(羽根車を支持するスポークによる損失も加味した実験値)当初の目標に準ずる結果を得ることができ、広い流量範囲においても50%以上の効率を実現した. 2.小型ハイドロタービンに低ソリディティ羽根車を採用した際の異物通過性の改善効果の確認 小型ハイドロタービンの異物通過性を実験的に調査した. 異物の中でハードルの高い繊維状異物を使用した実験では,翼間ピッチ距離を長くした低ソリディティ羽根車を使用することで繊維状異物(ハハコグサ)の通過率が15%程度改善することがわかった.異物通過試験より低ソリディティ羽根車を使用する有効性を確認すると共に,異物通過性のさらなる改善に向けた設計指針を明らかにすることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では小型ハイドロタービンのさらなる高性能化と安定運転の実現を目的に,初年度においては以下の重要研究課題に取り組みおおむね良好な研究成果が得られた. 1.小型ハイドロタービンへ二重反転形羽根車を活用した際の性能上の有効性の検証 環境負荷の小さな直径100mm程度の小型ハイドロタービン(サボニウス水車やクロスフロー水車など)においては,50%を超える効率は得られていないため,二重反転形羽根車の効果を活用し水車効率60%を目標と設定した.ケーシング直径60mmと非常にコンパクトな小型ハイドロタービン用実験装置を設計・製作し,その性能特性を調査した結果,本供試小型ハイドロタービンは最高効率59%を実現し,広い流量範囲において50%以上の効率を得ることができた.また,スポークによる損失により効率が10%弱低下していることが明らかとなり,スポーク形状の改善によりさらなる効率改善(60%以上の効率)が可能であることがわかった. 2. 小型ハイドロタービンに低ソリディティ羽根車を採用した際の異物通過性の改善効果の確認 小型ハイドロタービンの異物通過性を実験的に調査した.異物の中でハードルの高い繊維状異物(ハハコグサ)を使用した実験では,翼間ピッチ距離を長くした低ソリディティ羽根車を使用することで繊維状異物(ハハコグサ)の通過率が15%程度改善することがわかった.また,繊維状異物は羽根車前縁周辺に付着しており,羽根車前縁と繊維状異物の接触を最大限に抑制する羽根車設計が重要であることが明らかとなった.異物通過試験より低ソリディティ羽根車を使用する有効性を確認すると共に,異物通過性のさらなる改善に向けた設計指針を明らかにすることができた. 以上より,本供試小型ハイドロタービンの性能上の有効性と低ソリディティ羽根車の効果を確認できたことからおおむね順調に研究は進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により二重反転形小型ハイドロタービンの性能上の有効性と低ソリディティ羽根車採用の効果が明らかになった.今後は小型ハイドロタービンの異物混入時における流動現象の解明を行い,その安定運転を実現する羽根車設計や運転不能予測法の構築に向けた取り組みを実施する. 1. 異物混入時における小型ハイドロタービンの流動現象の解明 小型ハイドロタービンの高性能化および安定運転には,ロータおよびケーシングを通過する異物を含む流体の流動現象を明らかにする必要がある.そこで,高速度カメラを使用し,異物混入時における羽根車内部の可視化実験を実施し,その流動現象から異物による運転不能メカニズムを明らかにする.また,羽根車のソリディティの違いが異物通過性に及ぼす影響を調査し,あらゆる異物に対しても比較的長時間に渡って安定して運転できる二重反転形小型ハイドロタービンの羽根車設計指針についても明らかにする. 2. 異物混入時における流動現象と運転不能状態との関連性の解明 運転不能状態は,実際の小型ハイドロタービン設置環境下における変流量を伴う流動現象と密接に関連性がある.そこで,実際の設置環境を想定した高精度な流量調整および流量変動を再現できる実験装置の構築を行う.その上で,可視化実験より明らかとなった異物混入時の流動現象と運転不能状態との関連性について考察を行い,良好な異物通過性を実現する流動状態について検討を行う.また,各種異物による運転不能発生メカニズムを系統的に整理した上で,運転不能を事前に予測するための手法を考案し,運転不能状態に陥る前にメンテナンスが実施できる小型ハイドロタービンの確立を目指す.
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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