小水力は,新エネルギー分野として位置づけられており,ピコ水力などの小型ハイドロタービンが注目されている.しかし,小型ハイドロタービンは大型の水車と比較し効率が低く,農業用水や小規模な河川などで利用されるため,異物を含む条件下における水車内の流動現象の解明やその流れ場に適合した高性能かつ異物通過性の良好な小型ハイドロタービンの確立が求められている.そこで,本研究では小型ハイドロタービンの高性能化と安定運転の両立を目的に,小型ハイドロタービンに高性能化が期待できる二重反転形羽根車を採用した. 1.異物混入時における小型ハイドロタービンの流動現象の解明 小型ハイドロタービンの高性能化および安定運転には,ロータおよびケーシングを通過する異物を含む流体の流動現象を明らかにする必要がある.そこで,異物の中でハードルの高い繊維状異物(ハハコグサ)を使用した可視化実験を実施した.繊維状異物は羽根間を通過する際はその影響は小さいが,羽根前縁に付着すると羽根前縁周りの流れが大きく閉塞され,水車性能が大きく低下することが可視化実験より明らかとなった. 2.異物混入時における流動現象とロータ損傷や運転不能状態との関連性の解明 ロータ損傷や運転不能状態は,実際の小型ハイドロタービン設置環境下における流量変動と密接に関係する.そこで,実際の設置環境を想定した高精度な流量調整を再現できる実験装置の構築を行った.流量変化時における本供試ハイドロタービンの性能特性を調査した結果,比較的安定した発電が実現できることがわかった.一方,異物による羽根間流れの閉塞が不安定運転,ロータ損傷と密接に関わるため低ソリディティ羽根車の適用が異物通過性のさらなる改善に向け重要であることを示した.また,異物の付着形態と性能および安定運転との関連性が明らかになったため,性能に着目した運転不能予測法を考案するに至った.
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