1,液膜の排水及び破断に対する不純物の影響 気泡と壁面の衝突を模擬する実験において,液体として用いた超純水に界面活性剤(トリトンX-100)及び電解質(硫酸マグネシウム)を混入し,それらが液膜の排水及び破断に及ぼす影響を解析した.特に,電解質の影響について,純水との比較において,膜厚が十分に厚いときには膜厚分布の時間変化に差異は認められない一方,液膜が薄くなり破断に近づいた時の挙動が異なり,液膜破断が抑制される傾向が見られた.このように,液中の不純物の影響に関して,気泡合体阻止等の定性的な評価ではなく,液膜の動的挙動を定量的に捉えた上で評価することに成功した.また,液膜厚さの干渉計測において,二色の光源を用いた解析手法を考案し,絶対膜厚分布の推定が可能であることを示した. 2,静止流体中の斜め平板下における気泡群の運動の高速度カメラによる計測 角度可変な斜めチャネルを作成し,複数の細管を用いることで直径1ミリメートルの単分散の気泡径分布を有する球形の気泡群を導入できる実験装置を作製した.二次元的な拘束を受ける球形気泡の群運動に対して,とくに気泡表面の境界条件による影響を解析するため,界面活性剤溶液(ノースリップ)と電解質溶液(フリースリップ)をそれぞれ用いた比較実験を行った.尚,斜めチャネルの角度を調整することで平板に沿う方向の気泡の上昇速度(気泡レイノルズ数に等価)を調整している.まず,二つの気泡は気泡の上昇方向に対して横方向の配置が安定的であり,多数気泡では横一列に並んだ構造をとりやすいことがわかった.また,気泡数密度を増加すると,まず横に並んだ一列の気泡群が層状に重なっていき,気泡クラスタを形成する様子が確認された.以上の定性的な傾向は気泡表面の境界条件の差異に依存しなかったが,安定的な二気泡間の距離等の定量的傾向については違いが見られた.
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