申請者らの開発したサンド・エロージョン予測手法をベースに,液滴衝撃エロージョン特有の現象をモデル化・導入した.液滴衝撃エロージョンは連続相・分散相の時間スケールに対して,壁面形状変化の時間スケールが著しく大きいことから,弱連成問題として取り扱うことができ,液滴の衝突位置・衝突速度を得るために,オイラー・ラグランジュ法を使った.一方,液滴衝撃エロージョンの場合,液滴は単純に上流から流入するだけではなく,温度変化に伴う凝縮を考慮する必要がある.凝縮をオイラー的に取り扱う場合の計算例は多数あるが,ラグランジュ法では例がなく,液滴の発生箇所・液滴直径を計算できるよう拡張した. また,液膜の存在や衝突による飛沫の効果があるため,損傷量を計算する相関式がサンド・エロージョンよりも複雑になる.従って,損傷量を計算する相関式は,液滴の衝突速度・衝突角度・材料特性に加え,液膜の有無・衝突による飛沫を考慮して構築した.本研究の平成24年度までの途中経過は計算工学会およびWCCMにおいて報告した.平成25年度は,これらの計算手法を用いて正方形断面90度ベンドおよび低圧タービンを対象としたシミュレーションを行い,構築したモデルが実験データを妥当に再現できることを示した. 本研究で得られた成果の公開については年度内に完了できなかったが,可能な限り速やかに学会発表および論文投稿などの形で成果発表を行うつもりである.
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