マイクロバブルを援用した集束超音波治療に対する物理モデルの高精度化と数値解析手法の構築を行い,マイクロバブルを含む生体ファントムを用いた集束超音波治療のin vitro実験に対応した数値解析によってモデルの定性的な妥当性を示した.本研究で開発された数値解析手法を用いて,マイクロバブルの体積率が10-5まで大きくなると治療の目的部位よりも手前が加熱されるという現象を再現した.この現象に対して,加熱領域の位置制御について検討した結果,マイクロバブルの共振周波数よりも高い周波数の超音波を照射することで,伝播過程における音響エネルギーの減衰を抑制し,目的部位での加熱効率を向上できることがわかった.さらに,基本周波数とその倍の周波数の超音波を重畳させ,正圧を強調した超音波を照射することによっても,同様の効果が得られることがわかった.一方,微小血管網のように,焦点領域よりも小さい領域にマイクロバブルが空間的に局在化した分布を作成し,集束超音波を照射する数値計算を実施した.その結果,マイクロバブルの振動による発熱が顕著に現れ,焦点形状と異なりマイクロバブルの分布に対応した加熱領域が得られた.このことは,腫瘍に付着する機能を有する多機能性マイクロバブルを利用することで,治療の目的部位である腫瘍をよりロバストにかつ効率的に焼灼できるということが数値解析によって示された.このような超音波に対するマイクロバブルの応答は圧力振幅の大きさに依存した非線形現象であるため,数値解析による効果の検討が非常に有効である.マイクロバブルを援用した超音波治療において,超音波発振装置の設計開発や,診断用として用いられているマイクロバブルを治療用として新たに開発する上で重要な知見を本研究で開発された数値解析手法によって得ること可能になった.
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