研究実績の概要 |
最終年度は,当初の予定通り,回転を伴う計算ドメインのトポロジー変化に対応する計算手法を検討し,提案した.これをslip-interface法と名づけた.Slip-interface法の応用範囲は,非常に広く,本年度の例では,垂直軸型式風車の風車全体の解析,換気扇の解析,ターボチャージャー,ポンプなど多くのテストケースがあり,その効果を確かめた.特に,前年度から取り組んでいる温度変化のある解析として,ディスクブレーキ問題に取り組んだ.ブレーキパッドとディスクの接触を含むことから,slip-interfaceを注目する物理現象の近傍に設置する必要があり,解析精度が問われた.結果から,非常に安定性および解析精度が良好であることが分かった.なお,本温度解析手法には,温度場に対しても流体と連成する乱流モデルを提案し,良い結果を得た. また,同様な理由でトレッドを含むタイヤの解析にslip-interface法を利用する手法を検討した.タイヤは接地面があるため,回転部の他に前年度に提案したトポロジー変化に対応する手法 (ST-TC法)を併用する手法を用いた.本手法は, slip-interface上では適応が難しく, その難点を回避するために, slip-interface法にweakly-imposed Dirichlet boundary法を適応した. 本手法は, 境界面のDirichlet boundaryコンディションを弱く設定する手法で, Discontinuous Galerkin法で一般的に採用されている手法である. 特に, メッシュ解像度が低いときに通常のDirichlet boundaryコンディションより解析精度が良く,解像度が十分な場合は両者に差異がないことも認められている. 以上の点より3手法の組み合わせにより横溝を含むタイヤの解析を実現した.
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