研究課題/領域番号 |
24760147
|
研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
大林 寛生 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 J-PARCセンター, 研究員 (40446464)
|
キーワード | 超音波 / 液体金属 / 高温環境 |
研究概要 |
本研究課題では、500℃近傍の高温度条件における液体金属流動場計測を実現する技術の研究開発を実施する。課題項目としては、(A)音響伝播管を備えた高温対応型超音波センサーの開発、(B)実際の液体金属流動場への適用と、材料腐食と流れ場との関連性検討、の2項目を設定した。平成24年度に引き続き、平成25年度は本研究の実施課題として、項目(A)についての研究開発、および項目(B)を実施するための予備試験を行った。 項目(A)超音波センサーの開発では、平成24年度に実施した予備解析、簡易的な信号透過試験の結果を基に、計測に用いる伝播管を試作、信号伝播挙動を計測する試験装置を製作し、流体中を伝播する信号強度分布の計測実験(常温)を実施した。計測の結果、予備解析結果と同様に伝播管前方に超音波ビームの形成を確認し、透過率についても同様な結果が得られた。介在物に接触させた状態での実験では、垂直入射条件では解析とほぼ同様の結果が得られた。これに対し、介在物に対して伝播管を5°傾斜させた条件(実計測を模擬した配置)では、介在物通過後の信号強度が予測値(25~30%)の1/2以下(15%以下)に低下する現象が確認された。この原因として、傾斜させることによって伝播管と介在物間にできた隙間で、流体(本実験では水)と伝播管/介在物(SUS316等の金属材料)のような音響インピーダンスが大きく異なる材質に起因する強度の多重反射が発生したことによるものであると考える。対策として、現在伝播管の設置手段としての治具の設計検討を実施している。高温条件(100,200,300℃)の試験では、小型のSUSポット内を鉛ビスマス合金で満たし、信号透過経路上に設置した反射体(SUSプレート)からの反射信号により、計測位置の検出精度について評価し、信号長(約0.8mm)に対して1/10以下の検出精度が得られた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度における課題として、平成24年度に実施した予備解析を基に伝播管を製作し、常温条件(20℃)における伝播管通過後の信号強度評価実験を実施した。伝播管側面での信号多重反射を回避するため、素子径に対して3倍の直径を持つ伝播管を製作した。解析結果を基に、伝播管材料はSUS316,Alを採用した。1次元的な解析では、信号波長の整数倍が最適である結果が得られていたが、加工精度、表面処理状態などに厳しい条件が求められるため、一律の管長さ(80mm)を採用した。実験の結果、伝播管通過後の信号強度は解析結果とほぼ一致する結果が得られており、伝播管側面での多重反射を回避できたものと考える。一方、管内部構造をφ1mmの円柱を配置した伝播管を製作し、同様の評価試験を実施した結果、伝播管内の反射を低減できる見込みを得たが、管通過後のビーム形成が確認できなかった。実計測における流路配管を模擬した介在物を伝播管前方に配置した場合の実験では、垂直入射条件においては解析と一致する結果が得られたが、実際の速度場計測を模擬し、伝播管を数度傾斜させた条件における実験では、介在物通過直後の信号透過率が極端に低下することが確認された。これは、伝播管と介在物管にできた隙間において発生する信号の多重反射に起因するものであると考えられる。通常の計測では、この隙間にゲル状のカプラントなどを充填する対策を施すが、カプラントと伝播管、流路配管との音響インピーダンスが大きく異なる場合、計測を妨げる反射が定常的に発生する事態となる。このため、カプラント材を選定するための予備解析と配管に伝播管を設置する治具の最適化を含めた設計検討を実施している。鉛ビスマスを用いた反射板位置検出試験では良好な結果が得られており、温度条件については耐えられる見込みを得た。現状において、平成25年度目標は概ね達成されたものと考える。
|
今後の研究の推進方策 |
平成25年度に実施した研究開発の中で、流路配管に対して伝播管が数度程度傾斜した条件において、傾斜により形成された間隙で発生する信号の多重反射が計測対象への信号伝播を妨げることが確認された。このため、間隙に充填するカプラントの材質による音響的なマッチングについて評価を実施する。現状では、ゲル状のシリコン系カプラントを想定しているが、300℃を超える高温条件における長期保持性の観点から、銀などの金属製カプラントについても評価を実施する。特に、金属製カプラントにおいては押付圧の設定が信号透過に大きく影響を与えるため、伝播管保持に用いる治具に設置する押付機構について設計検討・簡易実験を実施し、製作に反映する。また、実際の鉛ビスマスへ適用、評価試験を行うため、試験用の配管を製作する。実計測では計測部内壁の濡れ性が計測結果に大きく影響するため、内面を研磨処理した後にNi鍍金処理等の対策を施す。この他、管壁外からの計測では、上記の間隙での多重反射やカプラントの材質による音響的なマッチングなどの問題があるため、伝播管を直接計測対象へ浸した際の計測についても評価を実施する。この場合、本課題で対象とする鉛ビスマスの鋼材に対する腐食性を考慮し、伝播管材質にはSUS316、および鉛ビスマスに対して比較的濡れ性の良い高クロム鋼材を採用する。最終的には、開発した伝播管計測系を実際のLBEループ内部流動計測に適用し、結果について評価する。また、本研究課題の最終年度として総括を行い、報告書を作成する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度実施予算において、受領額と支出額に2,405円の差額が出ている理由として、①予算執行において当初想定していた物品の仕様の見直しをしたため、②購入時において当初想定していた仕様見積り額と契約額に差額が発生したためである。 発生した差額については平成26年度受領額と併せて課題遂行に必要な機器・消耗品の購入に充当する。
|