本研究課題では、500℃近傍の高温条件における液体金属流動場計測を実現する技術の研究開発を実施した。課題項目として、(A)高温超音波センサの開発(B)実流動場への適用、の2項目を設定し、平成26年度は本課題の最終年度として、主に項目(B)の研究開発を実施した。 平成25年度までに開発を進めてきた超音波センサを改良し、新たにセンサ固定治具と音響伝播管を製作した。高温条件における試験中において、センサ素子-音響伝播管の間の接触不良に起因した信号伝播の阻害事象が発生したため、該当箇所に銅製カプラント材を設置し、素子押しつけ圧を増すことで、この問題を解決した。本センサを用い、既存の溶融鉛ビスマス(LBE)ループを用い、温度条件150℃での速度場計測を実施した。試験時のトレーサ粒子としてArガスバブルを用いた。計測の結果、試験部配管の濡れ性が悪く、信号送信は可能であるが、反射波の受信が不可能な状態であり、温度条件を300℃とした状態でも改善されなかったため、LBEと比較的良好な濡れ性が得られる高クロム鋼製の伝播管を試験部挿入し、送信側と受信側を分割した状態で計測を試みた。試験の結果、計測時間分解能50msecで試験部配管内の速度情報を得る事に成功した。得られた速度は、電磁流量計で確認された参照流量から導かれる平均速度と非常に良く一致し、最大流量時(30l/min)において、平均流速0.4m/secに対し、約±0.04m/secの偏差で計測することができた。温度条件による流れ場の変化は、試験部配管や挿入した伝播管の熱伸びの影響が大きく、これらを補正した状態ではほぼ変化が無いことが確認できた。問題としては、計測時に流れ場に混入するトレーサ粒子の供給手法が挙げられる。この点については、エロージョン発生機構の鍵となる壁面近傍の流れ場の状態の計測に重要な要素となるため、本研究課題終了後も引き続き研究開発を実施し、問題解決に取り組んでいく。
|