研究課題/領域番号 |
24760153
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 福岡県工業技術センター |
研究代表者 |
周善寺 清隆 福岡県工業技術センター, 機械電子研究所, 研究員 (00416504)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 氷核生成 / 超音速流れ |
研究概要 |
微小な過冷却水滴と氷粒子を噴射するマイクロアイスジェット洗浄はウェハに付着したサブミクロンの粒子状物質などのコンタミの洗浄に非常に有用である.一方,レジストなどの有機膜の剥離には不適で,氷生成率及び凍結率を向上させて現状の軟質な氷粒子を硬くすることが求められている.そこで本研究では,有機膜等のフィルム状汚れを除去可能なマイクロアイスジェットを開発するために,水滴の氷生成率及び凍結率を向上させることができるノズルの形状と作動条件について明らかにする.本年度は,マイクロアイスジェットの主な作動条件である圧縮空気の供給圧力を従来の0.6MPaから商用の中圧コンプレッサで利用可能な圧力である1.4MPaへと変更した場合において,ノズル形状に対する液滴の出口速度,氷生成率,凍結率について熱流体解析により調べた.ラバルノズルの基本形状は,ダイバージェント部の輪郭線形状を求める特性曲線法とノズル内壁面に成長する境界層を補正する流路拡径率を求める空気流れ解析により決定した. 空気流れと水滴冷却の連成解析の結果より,水滴径によってノズル内部における水滴の冷却特性および加速特性は異なり,水滴の粒径が小さいほど冷却速度及び加速特性は大きくなった.スロートから出口までのノズル長さとノズル出口での粒子速度を調べた結果,ノズル長さ250mmとした場合においても,ノズル出口での水滴平均速度は550m/sであり,従来のノズル長さ150mmから100mm以上長くすることが可能であった.また,ノズルが長くなることで,水滴から氷粒子に相変化する水滴径のしきい値は大きくなり,ノズル出口における凍結率(水供給量に対する氷生成量)は64%(従来比で70%増加)となり,小さい水滴はより低い温度まで冷却され粒子の硬度が大きくなることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,超音速ノズルを用いた圧縮空気の断熱膨張により,ノズル内において微小な水滴を冷却することで得られるマイクロアイスジェットに含まれる氷粒子の生成率及び凍結率を制御・向上させることを目的としている.平成24年度の計画は,空気流れ解析により壁面に成長する境界層を補正する流路の拡径率を求め,水滴の冷却解析により圧縮空気供給圧力に対するノズル長さと氷生成率及び凍結率の相関を調べることであった. 計画にもとづき研究を実施し,圧縮空気供給圧力を高くすることで,空気流れの速度,静温を保持しつつノズルを伸長させることができ,氷生成率及び凍結率の向上が可能であることが示唆された.したがって,研究は当初の計画に沿っておおむね順調に進捗している.
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今後の研究の推進方策 |
解析結果にもとづきマイクロアイスジェットノズルを試作し,圧縮空気供給圧力とノズル長さに対する噴霧速度について明らかにするために,位相レーザドップラ粒子分析計を用いて計測を実施する.試作するノズルの流路長さは変更可能とする.測定ポイントをトラバースさせることで,ノズル出口における半径方向および軸方向の速度分布を取得し,圧縮空気供給圧力に対して速度を維持しつつ伸長可能なノズル長さを求める.また,実験と解析結果について比較検討し,解析の妥当性について確認する. 氷生成率および凍結率の向上について明らかにするために,有機膜の剥離性能を調べる.評価試料である有機膜は,レジスト液をウェハ基板にコーティングし,乾燥炉で固化乾燥させて作成する.レジスト液の粘度により膜厚を調整し,厚みを20μm程度となるようにする.試験前後の膜の状態について,表面形状測定装置を用いて,除去深さ,除去面積を算出することで,性能を定量的に評価する.以上の研究を実施することにより,マイクロアイスジェットに含まれる氷粒子の生成率及び凍結率を制御・向上させることができる.
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次年度の研究費の使用計画 |
当初予定と異なり,初年度は旅費の執行を行わなかったために繰越金が発生した.初年度の繰越金および次年度に請求した研究費は,マイクロアイスジェットノズルを試作する費用,およびノズルへ供給する水の微小な流量を精密に制御するための液体マスフロコントローラを購入する費用に供する.
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