微小な過冷却水滴と氷粒子を噴射するマイクロアイスジェット洗浄はウェハに付着したサブミクロンの粒子状物質などのコンタミの洗浄に非常に有用である.一方,レジストなどの有機膜の剥離には不適で,氷生成率を向上させて現状の軟質な氷粒子を硬くすることが求められている.そこで本研究では,水滴の氷生成率の向上を目的として,ノズルに供給されるエア圧力を増加させ,氷生成率,粒子速度及び有機膜剥離性能について調べた. 空気流れと水滴冷却の解析により,エア圧力を0.6MPaから1.4MPaに増加させた場合における水滴の速度と氷生成率について調べた結果,ノズル長さを従来よりも100mm伸ばした状態においても超音速流れが維持され,水滴がノズル内において冷却される時間が長くなることで,氷生成率が向上することがわかった. 解析結果にもとづいてノズルを試作し,位相レーザドップラ分析計を用いてノズル出口における粒子の直径と速度を評価した.速度測定の結果から,エア供給圧力によって粒子速度が最大となるノズル長さが異なることがわかった.圧縮空気の供給圧力が1.4MPaでは,ノズル出口中心での速度は長さ150~200mmにおいて最大値540m/sとなり,200mm以上では徐々に低下し,長さ300mmにおいて500m/s以下となった. 噴霧速度と氷生成率に対する有機膜剥離性能の相関を調べるために,レーザープリンタの感光体カートリッジ表面の有機感光体膜の除去試験を実施した.膜除去試験前後について表面形状測定装置を用いて除去深さ,除去面積を算出することで,除去性能を定量的に調べた.エア圧力に対応したノズルを用いた場合において有機感光体膜の除去が可能であり,エア圧力1.4MPaでは0.6MPaに比べて,除去面積は16倍となり顕著に除去性能が向上した.
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