研究課題/領域番号 |
24760156
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
宮田 一司 東北大学, 流体科学研究所, 助教 (00610172)
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キーワード | プール沸騰 / 限界熱流束 / 液体窒素 / 伝熱促進 / 微細くぼみ |
研究概要 |
超伝導体や電子デバイスの冷却に利用される核沸騰冷却の性能向上のために,限界熱流束を向上する微細構造を有する伝熱面の開発を行っている.平成24年度までに,本研究で提案する微細くぼみ付伝熱面が限界熱流束の向上効果を有することを明らかにした.第2年度目である平成25年度は,24年度に製作した伝熱面のくぼみの深さ,大きさ,形状を変更しながら実験を行うことによって,それらの影響を明らかにした. 実験を行った伝熱面の詳細とそれらの限界熱流束向上効果を以下に示す.基準となる伝熱面は,無酸素銅製の円形(直径25 mm)で,その上に,微細な穴が周期的に配置された直径25 mmのSUS304製の薄板を置くことで,くぼみ付き伝熱面を形成する.平成24年度には,三角形くぼみ(一辺の長さ2.5mm,くぼみの深さ0.1 mm,ここではA1と呼ぶこととする)の伝熱面で,平滑な伝熱面に対して限界熱流束が20%向上することを示した.平成25年度は,以下に示す3種類の伝熱面を作成して実験を行った.A1と同じ三角形くぼみでくぼみ深さを浅くした場合(一辺の長さ2.5mm,くぼみの深さ0.05 mm,A2),平滑面に対する限界熱流束向上率は約30%となり,くぼみ深さが浅いほど向上率が高いことがわかった.また,三角形くぼみを小さくした場合(一辺の長さ1.0mm,くぼみの深さ0.05 mm,B2),向上率は25%とA2と比較して若干低くなった.その原因は,蒸発に寄与しないくぼみを隔てる梁の面積が相対的に広くなったためと考えられる.また,溝形状の影響を明らかにするため,円形くぼみ(直径2.2mm,くぼみの深さ0.05 mm,C2)の実験も行い,向上率は20%であることを確認した.この溝の大きさは,A2と熱的に等価であるが,A2の向上率の方が高いことから,三角形のくぼみ形状が有効であることが確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り,くぼみの形状や大きさを変えて実験することにより,限界熱流束向上効果に及ぼす各パラメータの寄与が明らかとなり,くぼみ形状の最適化への指針を得るとともに,限界熱流束向上のメカニズムに関する議論が可能となった.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた結果から,くぼみの大きさをさらに小さくすることで,より高い限界熱流束を達成できる可能性があることが明らかになった.そこで,まずは,これまでよりもくぼみの大きさを小さくして限界熱流束向上効果を確認する.その結果を,これまでに得られている結果と合わせ,限界熱流束向上効果と微細構造の大きさとの関係を明らかにする.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は,実験装置の工夫によって供試体の製作単価や供試体交換の際に必要な消耗品にかかる経費が下がったために生じた未使用額である. 平成26年度請求額と合わせ,平成26年度の研究遂行に使用する予定である.上記の通り,供試体の製作単価が当初の計画よりも抑えられているため,実験パラメータを増やして実験回数を重ねることに充て,より詳細なデータを得ることを目指す.
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