研究課題/領域番号 |
24760160
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
志村 祐康 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (30581673)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 乱流燃焼 / 希薄燃焼 / 振動燃焼 / 能動制御 / レーザ計測 |
研究概要 |
本研究では振動燃焼を抑制するために,振動燃焼の起源である熱発生率の変動,すなわち火炎構造の時間的・空間的変動と燃焼器内の圧力変動の非線形な関係に着目して,乱流燃焼の能動制御に必要不可欠な制御用センサー,制御デバイス及び制御アルゴリズムを総合的に開発し,ガスタービンモデル旋回型乱流燃焼器において能動制御実験を行い,振動燃焼の予測法と乱流燃焼の能動制御法を確立することを目的としている. 平成24年度は,半導体レーザ直接吸収分光法の高精度化を行うこと,半導体レーザ吸収分光センサーの出力信号と燃焼器内の圧力変動及び乱流火炎構造の非線形な関係を明らかにすることに重点を置いて研究を行った.半導体レーザ吸収分光センサーに波長変調検出法の一種である2f法を導入することで乱流燃焼制御用半導体レーザ吸収分光センサーの高精度化を行い,旋回型乱流燃焼器における計測から2f法を導入した半導体レーザ吸収分光法が振動燃焼の検出に有効であることを明らかにした.さらに,制御用センサーとして高周波数の振動燃焼にまで対応可能となるように高時間分解能化を検討した. 半導体レーザ吸収分光法は,その計測原理において吸収媒体の一様性が仮定されるため,温度や化学種濃度等に空間変動が存在する計測対象の場合,その有効性を明らかにする必要があり,平成24年度は主に数値シミュレーションを用いて取り組んだ.これまでに行われた大気圧条件下の旋回流を伴う水素・空気乱流予混合火炎の直接数値計算(DNS)結果から,旋回型燃焼器内で形成される火炎の温度や化学種濃度分布等にスワール数が与える影響を明らかにすると共に,DNS結果の各化学種濃度,圧力及び温度の空間分布から,半導体レーザ吸収分光センサーを適用した場合の2f信号をHITRANデータベースに基づいて算出する半導体レーザ吸収分光センサー適用シミュレーションを構築した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り,半導体レーザ吸収分光センサーの高精度化とその振動燃焼を検出することへの有効性を明らかにした.さらに,旋回型燃焼器内の温度及び化学種濃度分布等に基づいて半導体レーザ吸収分光センサーシミュレーションを構築した.現在,これを用いて半導体レーザ吸収分光センサーの出力信号,圧力変動及び乱流火炎構造の関係を検討しており,概ね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では,引き続き数値的研究によって半導体レーザ吸収分光センサーの出力信号,圧力変動及び乱流火炎構造の関係を検討するとともに,実験的研究では旋回型乱流燃焼器に形成されるメタン・空気乱流予混合火炎に対して高精度化した半導体レーザ吸収分光センサー,圧力変動計測及び平面レーザ誘起蛍光法(PLIF)等の火炎構造の光学計測法を適用することにより,上記の関係の検討を行う.これらの研究で得られた結果から,振動燃焼の予測法と能動制御アルゴリズムの構築を行う.能動制御アルゴリズム,制御デバイスとして二次燃料噴射,制御用センサーとして高精度化した半導体レーザ吸収分光センサーを用いてDSP(digital signal processor)を介した燃焼制御システムの構築を平成25年度から順次開始する.大気圧条件下の旋回型乱流燃焼器に適用して能動制御実験を行い,乱流燃焼の能動制御法を確立する.さらに,構築した燃焼制御システムの適用範囲を実機の高圧力条件へと拡張するために,高圧力条件下における乱流予混合火炎の直接数値計算結果に対して半導体レーザ吸収分光センサー適用シミュレーションを行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の研究において,高温非対応の圧力センサーの設置に準無限遠管の方法を採用することで,燃焼ガスが圧力センサーに与える熱の影響を十分低減させることが可能であり,高精度な実験を実現できることが明らかとなった.そのため,高温対応型の圧力センサーを導入することは必ずしも必要ではなくなり,平成24年度の予算に未使用額が発生した.この未使用額は平成25年度以降の予算と合わせて効率良く使用する.平成25年度は設備備品として,高時間分解能A/Dボードに加え,最終的な制御実験に用いるDSPが搭載されたコントローラボードを導入し,制御システムの構築を開始する.また,引き続き半導体レーザ等を使用して実験を行うため,消耗品として,レーザ計測関連の光学部品,半導体レーザ駆動系に使用する電子部品,燃焼実験を行う際の燃料ガスやパージ用窒素ガス等を購入する.また実験データ処理及び直接数値計算結果の解析に東京工業大学のスーパーコンピュータTSUBAME2.0を利用するため,計算機使用料が必要となる予定である.
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