本研究は非定常温熱環境下における熱的快適性の定量評価の確立を目的としているが、平成25年度は前年度に引き続き、環境温度が非定常に変動する空間での人間の生理学的特性(体温、血流量)と過渡温冷感(寒暖の感覚)の相関を実験的に解明することを試みた。 被験者の温冷感については、前年度に提案した、温冷感の変化を感じた時点でその変化の度合いを+3から-3までの7段階スケール(0をニュートラルとして、プラス側が暖かく、マイナス側が寒く感じ、数字が大きいほどその度合いが大きい)で申告してもらう方法を採用した。生理学的特性については、手甲と首の皮膚表面温度、深部体温(鼓膜温度)および指先の血流量を測定した。 室温をある温度から徐々に下げていき、設定温度に達した後に再び元の室温まで上昇させる実験を行ったところ、温冷感は環境温度の変化に追随するように変化するが、最終的な温冷感はもとの状態には戻らず、温冷感の積算値は多くの被験者において負の値となった。 また、室温を上昇させた後に元の室温まで低下させる逆の実験でも最終的な温冷感が負となる傾向が見られた。すなわち、温度差と温度の時間変化が同じであっても、温度が上昇する場合と下降する場合では、後者のほうが温冷感の変化を強く感じることがわかった。また、前年度の結果と同様、環境温度変化と温冷感変化の間には優位な時間遅れは認められなかった。 生理学的特性として、手甲と首の皮膚表面温度、深部体温(鼓膜温度)および指先の血流量を測定した結果、首部表面温度と深部体温は環境温度の変化に対してほぼ一定であったが、手甲表面温度と指先血流量については環境温度変化および温冷感変化と類似した挙動を示すことがわかった。
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