研究課題/領域番号 |
24760165
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
林 潤 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70550151)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 噴霧燃焼 / すす生成 / 粒径分布 |
研究概要 |
よどみ面付近に安定した噴霧火炎を形成することが可能な対向流バーナにおいて,異なる噴霧特性をもつ噴霧火炎に対して実験的な観察および直接数値解析を用いた検討を行った.改良型振動オリフィス式噴射弁を用いることで,燃料流量,空気流量など燃焼に大きな影響を与える物理量を一定に保ったまま,異なる噴霧特性を持つ燃料噴霧による噴霧火炎を形成することに成功した. 対向流バーナに形成される噴霧火炎中におけるすす生成特性を計測するために,レーザー誘起赤熱法 (Laser Induced Incandescence: LII)を適用した.その結果,噴霧油滴径が小さくなるほど,噴霧火炎中におけるすす生成領域が減少することが明らかとなった.また,噴霧油滴の平均粒径が等しい条件では,単一粒径を持つ燃料噴霧と比較して油滴径に分布がある条件(多分散噴霧条件)では,すす生成領域が小さい事が明らかとなった.これは,燃料噴霧が粒径分布を持つ場合,平均油滴径よりも小さな粒径の油滴が存在することで高温領域に到達する前に蒸発し,局所的に高濃度の燃料蒸気が形成できなくなったことに起因すると考えられる. 実験と同様の場に対して三次元直接数値計算を行い,噴霧火炎中における火炎形態を燃料と酸化剤の空間勾配から判断するFlame Indexを用いて評価した.その結果,多分散噴霧条件では,物質拡散に依存する燃焼(拡散的な燃焼)が弱くなることが示された.この結果は,実験結果の傾向と一致している. 噴霧燃焼場に対する新しい計測手法の開発に対しては,高速度-LII計測/高速度-ILIDS計測を行うために,超焦点距離レンズを用いた非燃焼場における噴霧の観察が可能であることを実証した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
噴霧燃焼に影響を与える燃料流量および空気流量を一定に保ったまま,噴霧中の油滴径が均一な単分散噴霧および様々な油滴径を持つ多分散噴霧の生成が可能となり,対向流場においてレーザー計測が可能となったため.また,噴霧火炎に対する計測および計算の結果として,本研究で扱った燃料流量の範囲では,多分散噴霧において,局所的な燃料蒸気濃度が濃い領域が減少すると共にすす生成量が減少することが明らかとなり,今後の研究進捗によって噴霧火炎構造の詳細を明らかにすることが可能となると予想されるため. 高速度計測に関しては,レーザーの準備状況により多少の遅れが生じているが,超作動距離のレンズを用いた計測,撮影の可能性に対しては実験が行えており,今後の計測手法開発に対して有効なデータとなりうると判断できるため.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の実験結果を受けて、「噴霧特性の重ね合わせによる噴霧火炎構造の解析手法の確立」に着手する。 平成25年度は、任意の噴霧特性を持つ燃料噴霧が形成する噴霧火炎構造の正確な予測を行うことが可能な解析手法の確立が目標となる。そこで、ガス火炎の燃料と酸化剤の混合分率を用いて、複雑な流れ場における燃焼現象が表現できる、Flamelet modelを噴霧火炎に対して適用し、混相燃焼場における直接数値計算(Direct Numerical Simulation; DNS)を行う。結果に対して、燃焼反応率やすす生成量を用いて考察を行い、噴霧特性が噴霧火炎構造とすす生成特性(生成量、すす粒子の空間分布)に与える影響を明らかにする。 平成24年度に引き続き、時間分解能が高いレーザー応用計測の開発を行い、平均油滴径および粒径分布が異なる燃料噴霧が噴霧火炎に与える影響に対する考察を加える。 平成25年度の成果をまとめ発表を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験に必要な,流路部品,燃料,光学部品などの消耗品購入に使用する.また,数値解析の開発環境の整備に必要な 研究成果の公表に必要な,校閲費用,出版費用に使用する. 研究成果の発表のための学会参加旅費に使用する.
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