研究課題/領域番号 |
24760166
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小田 豊 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50403150)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 乱流熱伝達 / LES / 乱流解析 / 複雑乱流 |
研究概要 |
流れの剥離・再付着や旋回に加えて,複数の吹出しや吸い込みを伴う複雑乱流場における乱流熱輸送現象は,例えば高温・高圧の燃焼ガスで駆動されるジェットエンジンの高温タービン部における翼列間流れや,翼内外の冷却流(フィルム冷却,衝突噴流冷却,リブ冷却)の熱流動場を支配しており,その現象解明は基礎学理および応用の両面から重要な課題である.このような複雑乱流伝熱場では局所の乱流形態(壁面,自由剪断)に応じて,乱流熱輸送を支配する渦スケールの異なる領域が,系内に複数かつ局在して存在する.その現象解明には高精度な乱流解析手法であるLarge Eddy Simulation (LES)が有効であるが,通常は必要に応じて解析領域各部の格子解像度が異なることから,これらの解析領域間の境界連結部において渦運動のスケール間相互作用を適切にモデリングすることが重要である.本研究では,差分法に基づくLESの境界連結部における渦間相互作用を合理的に扱うため,ビオ・サバール則に基づく渦法から着想を得て渦要素からの速度場再構築法を連結部に導入し,異なる渦スケールを持つ領域間で整合性のあるLESを可能とする「境界連結型マルチスケールLES」の開発を目指している.初年度にあたる平成24年度では,まず始めに,ビオ・サバール則に基づく渦要素からの速度場再構築モデルの考案と定式化,およびアルゴリズムの検討を行うとともに,この手法を既存のLES解析コードに実装するためにマルチブロック構造格子に対応した一般座標系に基づくLESコードを新たに開発した.また,このLES解析コードの妥当性を検討するため,ガスタービン翼冷却に関連する熱流動解析を実施した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に計画していたビオ・サバール則に基づく渦要素からの速度場再構築モデルの考案と定式化,およびアルゴリズムの検討を行うとともに,この手法を既存のLES解析コードに実装するためにマルチブロック構造格子に対応した一般座標系に基づくLESコードを新たに開発することができた.また,このLES解析コードの妥当性を検討するため,ガスタービン翼冷却に関連するいくつかの熱流動解析を実施し,境界連結部における各種境界条件の検討に柔軟に対応できる汎用性の高い解析コードを構築することに成功した.
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題で開発する解析手法の有効性を検討するのに適した解析を行い,本手法の妥当性を検証する.具体的には,エネルギー保有渦のスケールが異なる壁乱流と自由剪断乱流が同一系内に偏在する基礎的な系として,平行平板流路の底面から壁面に沿うように円孔噴流を吹き出す場(=単孔フィルム冷却)を対象として解析を行う.その際,壁面近傍の縦渦構造が支配する壁乱流領域(密格子域)と,主流と噴流の間で形成される混合層が空間発展して生ずる中規模渦からなる自由せん断層領域(粗格子域)の間に境界連結部を設けて,本課題で開発したモデルを導入した「境界連結型マルチスケールLES」を行い,風洞試験結果との比較,ならびに全領域を密格子で解析した結果との比較により,本手法の妥当性を検証する.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度に予定していた大型計算機の使用について,当初計画していたほどの大規模な解析の実施が必要で無くなったため,使用料の削減につながった.これらの予算については,平成25年度の大型計算機の使用料支払いに用いる予定である.
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