研究概要 |
観察窓付圧力容器を中心とする超臨界流体観察装置を設計,開発した.圧力容器は円筒形状を有し,内径20 mm, 長さ80 mmの内容積約25 ccで,適用可能温度,圧力範囲は-30 ℃~80 ℃,16.2 MPaまでである.容器長手方向を水平に設置し,容器両端に厚さ18 mmのパイレックスガラスを用いおり,そこから圧力容器内部の流体の挙動を観察することができる.圧力容器は均熱ブロックに覆われ,外部循環恒温槽からの循環液がコイル状に流れることで,温度を一定に保っている.混合物の相変化は非常に複雑で予測が困難である場合が多いことから,窒素と二酸化炭素の混合状態における超臨界流体の観察を実施した.窒素と二酸化炭素の混合物もその相平衡データから,水素と二酸化炭素の混合物同様,臨界曲線が発散する二成分系に分類できると推定され,PR式を作成した.実験ではまず,二酸化炭素をサイフォン式ボンベを用いて,液相の状態で15 ℃に温調した圧力容器に充填した.液は圧力容器の中心付近まで充填され,このときの圧力は5 MPaである.観察窓からは,二酸化炭素が気液二相になっていて,透明である.この状態から窒素を圧力容器上部から徐々に充填,加圧して行くと,10 MPa付近で気液の界面が不明瞭になり,試料の色も黒く着色してゆくことを観察することができた.12 MPaまで昇圧した状態で温度を3 ℃まで下げたところ,全体が激しく変化して液相が出現した.さらに10 ℃まで温度を上げ,超臨界状態に持って行き,これを段階的に膨張させて減圧すると,10 MPaで液相が現れ,その後の減圧でさらに液相が増えた後,液相が完全に消滅する過程を観察した.この変化は逆行凝縮現象と考えられ,複雑な超臨界混合流体の相変化の挙動を実際に観察することができた.
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