本研究は,筒内ガス直接噴射機関を想定しており,高圧に噴射された気体燃料噴流中における着火促進のための液体燃料の着火・燃焼状態を可視化することと液体燃料の噴射条件が気体燃料の燃焼に及ぼす影響を解明することを目的としている. 液体燃料と気体燃料の混合された燃焼状態の可視化するために,噴霧火炎中の固体及び液相部の可視化に背景散乱光撮影とその周辺部を含めた密度変化を可視化するシャドウグラフ撮影の同時計測を可能とする光学系を構築する.実験装置は,大型急速圧縮膨張装置を用いて,高温高圧場を形成する.気体燃料にはメタン,液体燃料には軽油を使用し,軽油の噴射時期,噴射量を変化させ,メタン燃焼への影響を確認する.また,比較のためにグロープラグを用いて,メタンを着火させ,軽油を用いずメタンのみの燃焼実験も行った.以上の結果次の知見を得た. 1.燃焼室を計測領域以上の大きさを持つハーフミラーを用いることで,軽油の拡散火炎に対して,火炎の直接撮影,背景散乱光撮影,シャドウグラフ撮影の3手法の同時計測を可能とした.背景散乱光およびシャドウグラフに用いたレーザーは,YAGレーザーとArレーザーを用い,干渉フィルターを通すことによって分光した.また,偏光子を利用して重ね合せた光を分光することができることも確認できた 2.軽油を用いたメタン拡散燃焼では,燃焼初期の段階において,軽油はすすを形成し,そのすす粒子は,後から噴射されるメタン噴流によって,火炎前方に停滞する.また,グロープラグにおけるメタン拡散燃焼においては,それらの様なすすは形成されない 3.軽油の噴射時期を変えた結果,通常より,早期に噴射した結果は,メタン燃焼に影響しないが,遅く噴射した結果,メタンの予混合領域が増加するため,急峻な熱発生となった.
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