初年度の研究成果を踏まえ,ポリカーボネート平板に毛細管式ヒートパイプと自励振動式ヒートパイプを形成し,伝熱特性に関する基礎実験を実施した.ここでは,ポリカーボネート平板の表面に溝を掘り,銅の薄板で密閉してヒートパイプを形成した.毛細管式ヒートパイプについては,10mm×10mmのヒートソースを対象とし,断面5.0mm×5.0mm,長さ100mmの直線状の熱輸送路を設け,内部にはウイックとしてポリエチレン粉体の親水性焼結体を設置した.一方,自励振動式ヒートパイプについては,30mm×10mmのヒートソースを対象とし,断面3.0mm×3.0mmの流路を長さ80mmの間で往復させ,ループ状の熱輸送路を形成した.いずれのヒートパイプも作動液には水を用いた. 実験では,それぞれのヒートパイプについて,初年度に構築した実験装置を用いて加熱・冷却を行い,温度分布の経時変化を測定した.比較検討のため,ヒートパイプに作動液を封入しない場合についても同様に実験を行った.その結果,毛細管式と自励振動式の両ヒートパイプについて,熱輸送路内で作動液が相変化する様子を観察でき,潜熱輸送が行われていることを確認した.これらの熱輸送特性は加熱量や作動液封入量に依存するが,ヒートパイプの簡易モデルを用いて有効熱伝導率を評価すると,毛細管式ヒートパイプについては最大で575W/(m・K),自励振動式ヒートパイプについては最大で453W/(m・K)の性能が得られた. 初年度および本年度の結果から,ヒートパイプの機構を形成することにより,電子基板のようなプラスチック平板にも,潜熱輸送の機能を持たせることが可能であるといえる.
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