研究課題/領域番号 |
24760174
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
長谷川 真也 東海大学, 工学部, 助教 (30580500)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 熱音響機関 / 熱音響発電 / 冷凍 / 非平衡熱力学 |
研究概要 |
24年度は2つの蓄熱器を有する直列接続型熱音響機関を対象に,全ての蓄熱器位置において高い音響インピーダンスによるエネルギ変換を実現すると同時に,共鳴管における音響インピーダンスは自由空間中を伝搬する進行波と同程度となる構成の実現方法を提案した.このような構成を実現するために,申請者は異なる仕様の蓄熱器と共鳴管の組み合わせ,それぞれに対する伝達マトリクスの固有ベクトルと固有値に着目した.固有ベクトルの要素の比は音響インピーダンスと等価となるため,伝達マトリクスの固有ベクトルが同じ蓄熱器と共鳴管の組み合わは音場を変化させることなく直列接続することが可能になる.よって固有ベクトルが同じであれば,本質的に無数の蓄熱器と共鳴管の直列接続が可能である.計算によって構成を定めた後,2つの蓄熱器を有する直列型熱音響機関を対象に実験を行った結果,共鳴管にて進行波音波かつ,2つの蓄熱器位置両方で自由空間中を伝搬する進行波と比較して4~7倍の高い音響インピーダンスを実現する,進行波熱音響機関が実現可能である事を示せた.また計算によって求めた熱効率は最大でカルノー効率の48.5%に達した.これは既存の内燃機関と比べても非常に高い値であると言える.この多段進行波音波エンジンは小さな温度比においても音響パワーの大きな増幅を得ることが可能である.さらに提案した手法は24年度に検討を行った蓄熱器が2つの場合に限らず,さらに多くの蓄熱器を用いた場合においても実現可能であることを示した.25年度は本提案を用いて,「大きな出力を有し低温度差,高効率を実現する熱音響機関」を設計し,その性能を検証する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで熱音響機関に関わった多くの研究者はトライアルアンドエラーで熱音響機関の動作条件を探し,その後,初めて計測を行うという手順を繰り返してきた.しかし本研究ではスピーカを加振器として駆動させ自ら望んだ条件を能動的に作り出すことによって熱音響機関の自励振動を待つことなく性能評価が可能を可能とした.装置構成は冷却器と加熱器,蓄熱器からなるユニットをスピーカ間に設置する多段増幅型熱音響機関とした.熱音響機関のエネルギ変換効率は,音響インピーダンスの大きさと蓄熱器流路径によって変化する.流路径が大きすぎれば熱交換が不可能になり,逆に流路径が小さすぎれば粘性によるロスが大きくなる.よって実験諸元に対して最もエネルギ変換効率の高いインピーダンスと蓄熱器断面積,蓄熱器流路径が存在する.伝達マトリクスを用いた数値計算モデルを用いて,断面積と流路径を変更しながらイタレーションを行い,蓄熱器における「音響パワー増幅率」及び,「エネルギ変換効率」が最大となる断面積と流路径を求めた.更に本研究では蓄熱器の断面積を共鳴管に対して急拡大することで圧力振幅に対する流速振幅を局所的に減少させ,蓄熱器位置で高い音響インピーダンスを実現した.また蓄熱器における熱力学第二法則効率は48.5%に達することを計算で示した. 24年度は提案した数値計算手法を用いることで,当初予定通りの非常に高い熱効率を有する熱音響機関を設計可能であることを示すことが出来,25年度に向けた基礎部分を固めることが出来た.
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今後の研究の推進方策 |
25年度は大振幅音波を入力可能な音響ドライバー(Q-drive社製2kwクラスリニアモータ)を用いて性能を検証する.大振幅音音波を入力源とすることで,より高精度な熱効率測定が可能になると期待出来る.また各加熱器温度は安定化電源を用いて各加熱器ヒータに入力する電力を制御する.25年度は24年度における構成を基本とし,空間的音響インピーダンス分布を共鳴管直径と長さを変更することで制御し,複数の蓄熱器を接続可能な構成を計算にて定めた後,実機を作成する.装置各箇所には加圧対応圧力センサ(JTEKT, PMS-5M-2-1M)を設置し,2sensor法を用いて音響インピーダンス分布と各蓄熱器における音響パワーの増幅率を測定し計算結果と比較する.本構成は「共鳴管においては進行波位相」並びに「蓄熱器においては高インピーダンスのエネルギ変換」を同時に実現するため熱効率はカルノー効率の50%以上に達することが見込まれる.最後に提案構成が目標を達成しているか熱効率を求め検証する.熱効率は2sensor法で求めた音響パワー出力を全加熱器ヒータへの投入電力の和で除すことで求め,実験結果と理論計算結果の比較を行い低温度差で高効率な熱音響機関を実現する.
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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